ビジネス

2023.12.05 11:30

ワーカホリックな「マスク依存」のリスク 

井関 庸介

天才的な起業家である一方で、物議を醸す言動もあるイーロン・マスク。来年も話題の中心か Chesnot / Getty Images

Forbesjapan.comで配信された記事を旬の人物やトピックで振り返る「REPOST」。今回のテーマは、米EV(電気自動車)大手テスラや、米宇宙開発企業スペースXのCEOを務めるイーロン・マスク。やはり彼が経営するX(旧ツイッター)上や、イベントで物議を醸す言動をするなど、よくも悪くもその規格外の人物像や行動力が人々を惹きつけている。9月13日に発売されたウォルター・アイザックソン著の評伝『イーロン・マスク』(邦訳:文藝春秋刊)映画化の話題を含め、見逃したかもしれない、読んでおきたいマスク関連の記事、5本を紹介したい。


近年、起業家の評伝や自伝の映像化が定着しつつある。『facebook 世界最大のSNSでビル・ゲイツに迫る男』(邦訳:青志社刊)の著者、ベン・メズリックのように映像化を前提に執筆するケースもあるほどだ。アイザックソンは、アップル共同創業者スティーブ・ジョブズの評伝『スティーブ・ジョブズ』(邦訳:講談社刊)が映画化されたこともあり、この展開を予想していた読者諸賢は少なくないだろう。
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イーロン・マスクの映画が制作中か、アイザックソンの伝記をもとに

筆者が、イーロン・マスクを米テスラ本社で見たのは2013年春のことだった。夕刻で、オフィスに社員はほとんど残っていなかった。数十ものデスクが一面に並ぶフロアを見渡すように、壁側に数室ほどガラス張りの個室が並ぶ。その一室に彼はいた。おなじみの白Yシャツにジャケット、デニム姿で、机の前に立ち、手元の書類に目を落としていた。 

帰り際、再びマスクを見かけた。今度はオフィス正面の車寄せで、来客と思しき人々を握手で送り出していた。想像していた以上に上背があり(編集部註:推定186cm)、がっしりした骨格で、自信みなぎる笑顔が印象的だった。
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イーロン・マスクはなぜビリオネアなのか?

あれから10年──。マスクは誰もがその名を知る世界的な起業家となった。私生活やパーソナリティが奇異の目で伝え報じられることも少なくない。今回の公式伝記が実現した背景には、(アイザックソンを介しているとはいえ)マスクが自らの視点で自分について話すことで、“事実”を正し、不要なメディア対応をせずに済ませたいという考えもあっただろう。
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話題沸騰の評伝「イーロン・マスク」は本当に読むべき内容か?

筆者はマスク本人をインタビューしたことはなく、今もその人となりについてはForbesの同僚や、他媒体を通じて報じられたものでしか知らない。そして、テスラのオフィスで見たときの印象が強いため、次のニュースのほうが気になった。それは、同社が“マスク依存”のリスクを抱えており、それが株主の懸念を呼んでいる、という報道である。
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組織を属人化させず、永続させる──。これはすべての会社と、その経営者にとって不可避な課題である。記事を読んでふと思った。マスクのいない、テスラやスペースX、スターリンクはどうなるのだろうか? あの日、社員もまばらな広大なオフィスフロアで一人残って仕事をし、来客を送り出していた“ワーカホリック”なマスクの姿が今も目に焼きついている。

文 = 井関庸介

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