北米

2023.09.12 18:00

話題沸騰の評伝「イーロン・マスク」は本当に読むべき内容か?

イーロン・マスク(Shutterstock)

9月12日(日本時間9月13日)に世界同時に発売されるイーロン・マスクの評伝は、世界一の富豪の心の奥底を垣間見ることができる貴重な作品だとされているが、ウォルター・アイザックソンが執筆したこの本には、マスクの物議を醸す側面についての批判的見方が欠けているとの指摘も上がっている。

ニューヨーク・タイムズ紙の批評家のジェニファー・ザライは、688ページにおよぶこの書籍が、マスクの内面を覗き見ることができるものだと評価したが、彼女はなぜアイザックソンがもっと踏み込まなかったのかと疑問を呈している。マスクは、人々がWoke(ウォーク)と呼ばれる社会的正義を重視するエリート主義から脱しない限り、文明は進化しないと主張しているが、アイザックソンは、それが具体的に何を意味するのかを尋ねるべきだったとザライは述べている。

ワシントン・ポスト紙の書評家のウィル・オレマスは、本書が興味深い暴露話に満ちていると指摘しながらも、アイザックソンが「洗練された批評よりも舞台裏のルポルタージュを優先した」と指摘し「少し安易すぎる」と主張した。

テレグラフ紙のスティーブン・プールは、この本に5つ星中の4つ星の評価を与え、マスクがツイッターを買収した理由についての最も説得力がある説明が、彼の私生活に関連するものだと指摘した。アイザックソンは、南アフリカの学校でいじめられ、暴力的な父親の下で育ったマスクが、この買収で「ようやく自分の遊び場を手に入れた」と書いている。

ニューヨーカー誌の批評家のジル・ルポアは、伝記作家として高く評価されているアイザックソンが「物事を成し遂げるためには常にいい人である必要はない」という考え方に魅了されているようだと指摘した。「しかし、私たちにとって、マスクの心の狭さや傲慢さは耐え難い」とルポアは述べている。

現在71歳のアイザックソンは、1978年にタイム誌の編集部となり96年に同誌の編集長に就任した後、2001年にはCNNの会長兼CEOに就任。アメリカ同時多発テロ事件ではCNNの事件報道を先導した。

2011年にはアップル社公認のジョブズの伝記『スティーブ・ジョブズ』を出版した彼は、過去2年間マスクに密着し、家族や友人、ビジネスパートナーらへのインタビューを通して、近年ますます物議を醸すようになった起業家の実像に迫ったとされている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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