2023.12.16 10:00

出張プラス1日、トランジットを旅のハイライトに

鈴木 奈央
続いてはラクダの試乗。ラクダに乗って砂漠を散歩するのは、私のちょっとした夢だった。一頭は嫌そうに、もう一頭は人懐っこくやる気満々で、それぞれ性格がくっきり現れていた。私のは嫌々の方で、調教師に何度も諭されて渋々立ち上がり、なんだかかわいそうになった。

ラクダの上では視点が高く、見渡せる景色が広い。背中は想像していたよりも凹凸がくっきりしていて、乗馬より上下の反動がある。二頭目がすりすり顔を擦り寄せて懐いてくれ、なんとも愛らしくありがたい気持ちに包まれた。

さまざまな地から参加している人々との交流も楽しみのひとつだ。アブダビに駐在している兄弟を訪問中のニュージーランド人の若い女性、我々と同じく空港から直行していたチェコからの若いカップル、ローマからクルーズ船に乗り、数カ月間自由に乗り降りして旅しているアメリカ人の庭師などと、旅の情報交換で盛り上がった。

オフロード走行は嘔吐を防ぐため、数時間前から食事ができない。すっかりお腹が空いたので、ヘルシーでおしゃれなカフェへ。

ここでは家族連れやカップルのほか、白いカンドゥーラに身を包んだ中年男性が、1人やグループで集まってお茶していた。これはけっこう新鮮でほのぼのする。日本でいうところの背広をまとった「おっさん」たちが、おしゃれカフェに集っている光景は、まず想像し難い。

モスクの入り口につながるショッピングセンター内のインフォメーションセンターでは、カンドゥーラを身にまとった若い男性が朗らかに観光客の応対をしていた。民族衣装で出迎えてくれるのは、異国情緒を感じられて嬉しい。日本のインフォメーションセンターの制服も、もっと和を打ち出した衣装にしたらいいのに。

質問をしてみると、流暢な英語でこちらのニーズを瞬時に汲んだ回答をくれた。さらに素敵だったのが、「Visitor’s Happiness Desk」という案内所の名称。その名の通り、訪れる人を幸せにしてくれる案内所だった。

モスク、美術館へ

その後訪れたシェイク・ザイード・グランド・モスクは、エレガントで荘厳。モロッコ、アンダルシア、オスマン帝国の建築様式を融合し、マケドニア産の大理石で作られた82個の純白のドームが、真っ青の空に鮮やかに聳える。柱には優美なチューリップなどの花紋様が品よく描かれていた。これまで宗教建築は古いものにこそ価値があると考えていたが、重厚感とフレッシュな美しさが共存したこのモスクに、伝統建築にはない軽やかな魅力を感じた。

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文・写真=山田理絵

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