私にとって旅は、世界の今に触れ、自分の視野を広げるいちばんの手段だ。その土地、その時々の雰囲気、その街の人々の表情、音、香りを通じて、勢いや雰囲気を読み取る。それらの情報は、メディアやネット検索からは決して得られない。だからハイエンドトラベラーたちは、旅に時間と資金と情熱をかけるのだ。
アブダビ滞在16時間の旅へ
今回の出張では、ビジネスミーティングと国際大会に参加するためスイスとフランスを周った。ウクライナ情勢の影響で飛行が南回りになり、直行便でもヨーロッパまで15、6時間近くかかるようになってしまった。その間ずっと座りっぱなしでは流石に辛い。さらにコロナのような状況がまた起こらないとも限らないし、世界情勢の不安や円安の加速もあって、再び旅ができない状況になるかもしれない。「ならば、乗り換え時間も旅の一環として楽しんでしまおう」と、帰りはあえてアブダビで16時間の乗り換え時間のあるフライトを選択した。
パリを夜半に出て、早朝にアブダビに到着。6時間弱のフライトなので仮眠程度だが、着いて早々活動できるよう、搭乗するなり強制的に目を閉じた。トランジットで荷物はスルーなので、身軽に入国。
アブダビは一部のタクシーが現金のみとの情報を、機内でキャビンアテンダントから得て、空港のトラベレックスで換金。ここでは、帰りに余った現金を無料で元の通貨に戻してくれるというサービスがあり、関心した。まだ現金社会な部分も残る日本でもこういうサービスを導入すれば、インバウンド客にはとても重宝されるだろう。
アドベンチャーとカルチャー、6つの体験
早速あらかじめ予約しておいたモーニングデザートツアーの集合場所へ。最初のアドベンチャー体験は、四駆で砂丘を激走するオフロードライドだ。アップダウンも傾きも、ジェットコースターを遥かに超える激しさ。感覚的にはほぼ直角だ。強く掴んだ手すりの手が濡れるほどスリル満点。砂丘を横滑りすれば、フロント、サイドガラスが共に瞬時に砂まみれになり、視界がサーっと消える。久々のサバイバル感に包まれた。
次はサンドボード。初心者は指示通りボードの上にうつ伏せになり、顔と足を上げる。次の瞬間に砂丘に突き放され、裾野に向かってまっしぐら。思わず叫ばずにはいられない。これまたなかなかエキサイティングな、スキーとはまた違った、大地が至極身近に感じられる滑走だった。
後ろ向きで二人乗りで滑る韓国人親子や、ボードに慣れている風のスペイン系のグループは、賑やかに歌いながら立ちで滑っていた。途中ボードから転げ落ち、砂まみれになる若者たちを皆で励ましたりと、楽しい時間が続く。