キム:いま最も活発なのは、NFT(非代替性トークン)や、ゲームなどのコンテンツ分野ですね。K-POPやウェブトゥーン、韓国ドラマといった人気のある知的財産権(IP)をベースとしたブロックチェーン基盤のサービスが増えてきています。企業は単にNFTを発行するだけではなく、自社のIPをもとにWeb3版のゲームを開発したりしています。
これらの企業は、DeFi(分散型金融)、マーケットプレイス、SocialFiなど、さまざまな要素を取り入れたゲームのエコシステムを開発しています。例えば、Netmarbleという会社は、NFT基盤の不動産を取引できる「Meta World: My City」と呼ばれるWeb3ゲームをローンチしました。Nexon、Neowiz、Kraftonなどの大手のゲーム会社は自社のIPを元にしたブロックチェーンサービスを企画しています。
吉川:日本では大手企業がWeb3に関心を示していますが、韓国では大手企業または金融機関はWeb3、暗号資産、ブロックチェーンに対してどのような態度を示していますか?
キム:サムスン、LG、SKなどの大手コングロマリット企業や、新韓銀行や韓国投資証券といった金融機関はどこもブロックチェーン部署をもっています。これらの企業は現在さまざまなPoC(概念実証)プロジェクトに取り組んでいます。独自のウォレットを開発したり、NFTマーケットプレイスやSTOプラットフォームを開発したりするなど幅広いです。20年までは多くの企業がオペレーション効率を向上させるためにブロックチェーンを導入することが多かったですが、現在はブロックチェーン基盤の上に直接サービスを構築することを目指すようになっているのが大きなトレンドだと考えています。
吉川:現在、韓国においてWeb3業界が直面している最も大きな課題は何ですか?
キム:2つの大きな課題があると考えています。一つは、多様性の欠如です。韓国は、主に韓国人のみから構成される排他的なコミュニティを発展させてきました。しかし、Web3の国境を越えた性質を考慮すると、より国際的なコミュニティへの参加が求められます。韓国人はグローバルなコミュニティではあまりアクティブではなく、また国際的なトレンドへの関心も薄く、それによってやや孤立した文化が形成されています。この問題はWeb3に限らず、韓国のほぼすべての産業に影響を及ぼしています。
吉川:いわゆる「ガラパゴス化」問題ですよね。日本でも同様の問題があり、状況はより深刻であると考えています。
キム:もう一つの問題は、暗号資産の取引量に対するオンチェーンアクティビティの低さです。多くの韓国人がオンチェーンでブロックチェーンサービスを活発に利用しているものの、多くの取引は中央集権型の取引所を通してオフチェーンで行われています。その結果、大量のトークンが中央集権型システムで保有され、ハッキングや市場操作などのリスクにさらされています。この流動性と取引をオンチェーンに移すためには、顕著なUX(ユーザー・エクスペリエンス)の改善が必要です。