キム:韓国のWeb3起業家は、典型的なエリート高学歴の経歴をもった人が多いですね。多くが、韓国の“アイビーリーグ”といわれるSKY系列(ソウル大学、高麗大学、延世大学)の大学の出身者です。また、KAIST(韓国科学技術院)やPOSTECH(浦項工科大学校)という著名な理系大学出身の起業家も多いです。
より良い大学を卒業すればするほど、優秀な卒業生と出会う機会も増え、雇用や資金調達の面でも有利に働きます。しかし、エリートだけが起業するわけではありません。著名な大学を卒業しなくても、素晴らしいスタートアップを築き上げた並外れた起業家が多く存在します。
吉川:韓国のWeb3起業家は日本市場への参入に関心をもっていますか?
キム:はい、とても関心をもっていますよ。韓国のWeb3起業家は海外進出計画について聞かれると、8〜9割の人が日本に言及します。しかし日本は言語障壁や、市場の不透明性などの理由から韓国人にとっては引き続き難しい市場です。とはいえ、Catalyzeは日本のプレイヤーと積極的に協業していきたいと考えています。
吉川:海外のWeb3または暗号資産プロジェクトは韓国市場をどう見ていますか? 積極的に進出していますか?
キム:'17年〜'18年の暗号資産への過熱ぶりによって、資本流出やマネーロンダリング(資金洗浄)への懸念が生まれ、それによって政府の規制が厳しくなりましたが、市場が成熟するにつれて一般投資家の知識レベルは向上し、ネガティブな事象は減っています。グローバルなプレイヤーは、韓国企業や開発者との協業に熱心です。
吉川:日本では、暗号資産の規制フレームワークが他国に先駆けて整備されましたが、税制面で、企業が発行したトークンに対する課税が問題となって、多くのWeb3起業家がシンガポールなどに移住して会社を設立する現象が起きました。Web3業界のロビー活動によって、この税制問題は解決されました。韓国では、このような国内の規制または税制的な問題によってWeb3起業家が海外に逃げてしまう現象は起きていますか?
キム:韓国では企業がシニョレッジ利益(通貨発行益)を目的にトークンを発行することが禁止されているため、多くのWeb3系スタートアップはシンガポールやケイマン諸島で会社を設立しています。トークン発行をしないブロックチェーン企業は、韓国で会社を設立しても問題ありません。韓国ではWeb3起業家の海外流出を阻止するための政府のイニシアチブは特に存在しておらず、多くの韓国起業家は依然として、ドバイなど海外のクリプトハブで会社設立をすることに高い関心をもっています。