VC

2023.11.24 08:30

米トップVCに聞く「10年後の理想」 日本スタートアップのポテンシャル解放へ

中村幸一郎氏

──グローバルスタンダードを取り入れることがなぜそこまで重要なのでしょうか。
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結局、投資でもグローバルスタンダードを採用しなければ国際協調が難しく、ディスアドバンテージを抱え込むことになりますし、日々アップデートされる新しい実務知識が反映されなくなってしまいます。スタートアップ投資にまつわる規制や新しい方式は日々どんどん新しいものが出てきます、日本独自のものを別個つくってしまってはそのアップデートを補足していくことは非常に難しいと思います。そのため、激しい競争のある分野で日本独自の手法をあえて採用する利点はほとんどないといえます。

ベンチャー業界におけるグローバル競争でいえば、ものすごい資金調達をして規模を拡大していかなければいけないため、日本の投資家からしかお金を集められないとなると不利にならざるを得ません。勝つ可能性はゼロではないかも知れませんが、調達金額には限界があり、選択肢も減ってしまう。私としては、グローバルで成長して競争していく企業であれば、そういった制約は設けない方がいいのではないかという考えになります。

もう一つ、日本の投資における独自条項も、実はかつてアメリカにもあった条項が多かったりします。ただ、メリットや意味がないためアメリカで廃止された場合がほとんどで、それをわざわざ日本でもう一度繰り返さなくてもいいのではないかと。
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──日米で知識のギャップが大きい要因はどこにありますか。

誤解を生む表現かも知れませんが、経営も含めて日本の文系教育はアップデートがされないという問題点があります。

スタートアップのファイナンスやマネジメントの仕組みは、新たな制度の誕生もあり、どんどん変わっていくものです。その変化に伴い、例えば「カウフマン・フェローズ・プログラム」も毎年10%ほどの内容が入れ替わっていきます。そうしなければ、新しい制度や需要に対応できません。

実際、20年ほど前の起業家教育であれば、自分の意見を伝えるためのプレゼンテーションやピッチのスキルが重要視されていました。ところが、現在ではファイナンスが複雑化し、仕組みも細かくなり、バリュエーションやマネジメントの手法に変化が起こるなど、ベンチャー企業を取り巻く環境も複雑化してきています。プレゼンやピッチのスキルは限定的な強みでしかなくなってきている現代において、日本では時代の変化に対応するようなアップデートがなされていないといえます。

当然、起業家教育は教える側も学び続けなければいけないため、本来は大変な分野といえます。しかし、日本はアップデートされないままが続いているため、ギャップもより広がってしまいます。

──正しい知識を得てアップデートするには、相当な覚悟が必要だといえそうです。

その通りですが、そうでもしなければ成功もしないものです。まともな知識も備えずに投資先を判断していたら、成功確率は必ず下がってしまいます。

人の感覚やセンスを否定はしませんが、それらはベースとなる知識があってこそ。直感を信じる投資は自己資金であれば問題ありませんが、他人から預かっている資金で投資してはなりません。

ただ、アップデートし続けることが評価される風潮が生まれれば、多くの人はそうあろうと努力するようになると思います。専門性も身に付けるようになるでしょうし、その専門性が評価されると、キャリアも築きやすくなる。そうやって、全体でプロフェッショナルな業界を築き上げることが、今後は重要になっていくはずです。
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