働き方

2023.11.06 10:00

「9時から5時まで」の働き方を疑問視するZ世代の主張にある真実

安井克至

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TikTokで拡散している動画の中で、ブリエール・アセロ(21)は大学卒業後に就くことになる「9時から5時」勤務を体験し「とても混乱している」理由を涙ながらに明かしている。

2万3000件以上のコメントと23万を超える「いいね」を集めたこの動画で、アセロは「一般的に、9時から5時まで働くという設定はおかしい」と述べ、1日の仕事が終わるころには疲労困憊していると訴えた。「仕事から解放されると、辺りは真っ暗。エネルギーなんて残ってない。どうやって友達を作るの? どうやってデートの時間を確保するの? 何かをする時間なんて持てやしない。とてもストレスが溜まってる」

動画を観て、人々がこれまで受け入れてきた大人であることの側面についてわめいているとして、アセロが自称するように「大げさでうっとうしい」とあきれて切り捨てる人もいるかもしれない。だがアセロは米国のハッスル労働文化の何が問題なのかを前面に押し出した。

アセロは長時間労働と通勤で疲れ果て、ワークライフバランスがうまく取れていないことにショックを受け、落胆した。絶えず忙しい労働は心身を消耗させ、精神面にも悪影響を及ぼす。

出社は必須?

米自動車メーカーのフォード・モーター・カンパニーは、創業者ヘンリー・フォードの下で1926年に標準的な「9時〜5時」勤務を導入した最初の企業の1つだった。2023年現在、この労働モデルは時代遅れで、労働者の精神衛生と幸福感という点で有害であるように思われる。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックのときに、我々はリモートワークやハイブリッドワーク、デジタルノマドなどの選択肢を持つことができることを学んだ。だが、多くの企業はいまだに従業員にオフィスに戻るよう命じている。

新しい技術の進歩やアプリ、ワークフローソフトウェアがある中で、8時間以上、職場の一室にこもり、さらに1時間ほどかけて暗い中帰宅する。これを週5日繰り返すのは必要で合理的とは思えない。

消耗し、費用もかかる通勤

米国では、ニューヨーク・マンハッタンなどの都市部に郊外から通勤する場合、長い道のりとな、電車・バス代は年間数千ドル(数十万円)にもなる。「パンデミック前に比べて、通勤費は2000ドル増え、時間も39時間余計にかかっている」と米誌フォーチュンは指摘した。
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翻訳=溝口慈子

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