国内アート市場「明るい未来の兆し」
日本アート市場は現状、前述したように小規模です。背景には制度面に加え、米国などと比べて富裕層が少ないこと、一般人も含めたアートへの意識の低さなどがあります。しかし、日本の名目GDPは世界3位(2022年)で、経済全体では500兆円以上の市場規模を誇ります。日本としては今後、まず早期に取引活性化のための制度面の整備、アーティストの市場活動を支える教育システムの整備を実現すべきだと思います。同時に経済・人口モデルを踏まえると、英国のように周辺国、つまりアジアを捉えた市場形成や、中間層も含めてアート売買に巻き込むモデルの構築も考えていく必要があるでしょう。
日本には独自の歴史・文化と高い技術を結集した、工芸などのお家芸があります。そうした固有の資源を生かしながら、産業政策や地域活性化、企業のイノベーション・改革と連動させれば、独自の強みを発揮できる可能性があります。
日本政府も、法制度や税優遇を検討しています。さらに昨今、「Tokyo Gendai」や「MEET YOUR ART FESTIVAL」などといった国内アートフェアの開催によって、「買う場所」としてのアートシーンも活気を帯びてきています。
先日参加した「MEET YOUR ART FESTIVAL 2023」では、Forbes JAPAN 30 UNDER 30(日本発「世界を変える30歳未満」)と連携した新世代アーティストの多様な活動の展示や、音楽イベントも実施されていました。そこでは日本固有のカルチャーと融合した、新しく躍動的な動きの萌芽をみることができました。会場にはアート業界の人から仕事帰りのオフィスワーカー、若者まで、多岐にわたる参加者が集い、国内アート市場の明るい未来の兆しを垣間見た気がします。
中国、韓国も速いスピードで動いています。日本は、アジアで良いポジションを取ることが肝要だと言えるでしょう。次回は、企業とアートとの関係について綴ります。