アート

2023.10.19

「ヴェルサイユを輝かせる」 宮殿総裁に聞くミッションと醍醐味

ヴェルサイユ宮殿総裁 カトリーヌ・ペガール(c)Christian Milet

フランスのヴェルサイユ宮殿。およそ400年の歴史を持つその宮殿は、華麗な建物や庭園のみならず、さまざまなイベントや展示、アーティストとのコラボレーションなど、絶えず“新しさ”も提供することで人々を魅了し続けている。

この世界遺産の「総裁」を担うのが、カトリーヌ・ペガールだ。日刊紙の政治部記者、週刊誌『Le Point』の編集長と、長年ジャーナリズムに従事してきた彼女は、2007年、当時のフランス大統領ニコラ・サルコジのアドバイザーに就任。その後、2011年に現職に就いて以降、3期続投している。

現在、銀座のシャネル・ネクサス・ホールでは、写真展「In Praise of Shadows - ヴェルサイユ宮殿」を開催(11月5日まで)。デザイナーであり写真家でもある森田恭通が、長い時間をかけ、独自の視点で切り取ったヴェルサイユの姿を展示している。

本展に際し来日したペガールにインタビューする機会を得た。「ヴェルサイユ宮殿の総裁」という堅苦しい肩書きとは裏腹に、飾らず自然体な彼女に、そのミッションと醍醐味を聞いた。
(c)  EPV / Thomas Garnier

(c) EPV / Thomas Garnier

──ヴェルサイユ宮殿の総裁として、日々どのような業務に取り組まれているのでしょうか?

ヴェルサイユ宮殿は、王宮でありながら、博物館・美術館でもあります。それらの運営を行いながら、約50職種、約1000人の職員を抱えるひとつの企業のような組織を束ねるのが私の仕事です。

任命時には、国からレターを受け取ったのですが、その冒頭に書かれていた「すべての人々にヴェルサイユ宮殿を開くこと」といった趣旨に、我々のすべてのアクティビティの目指す先が集約されています。地域の方々、世界中のツーリスト、学生たちなど、来る方全員を歓迎することが最大のミッションです。

それからもちろん、ヴェルサイユは政治や経済との結びつきも強いので、最近では英国王など、諸外国からの要人をお迎えすることも重要な役目ですし、毎年、世界各国の企業のCEOを100名ほどお招きする会合「Choose France」を大統領主催で開催しています。

──ヴェルサイユ宮殿では展覧会など、つねにさまざまな催しを開かれていますね。

そうですね。まずはヴェルサイユ宮殿のコレクションを紹介する大規模な展覧会。たとえば先日まで開催されていた展覧会では王の間とカラヴァッジョをテーマにしていますし、昨年はルイ15世にフォーカスを当てました。そのほか、ヴェルサイユのサイドストーリーなどをもとにした、小規模な展覧会も行っています。現在は、ルイ14世からの発注を受けて内装を担当した、画家のノエル・コワペルに着目した展示を来年1月28日まで行っています。

美術のみならず、宮殿に併設の「王室オペラ劇場」では、年間100ものコンサートやバレエの公演がありますし、仮面舞踏会や、庭園を会場にしたエレクトロニック・ミュージックのライブ、夏には噴水のスペクタクルなども好評です。

ファッションとの関わりも強いです。フランス史上初のファッションデザイナーは、マリー・アントワネットのためにドレスをデザインしたローザ・ベルタンだと言われていますし、ファッション・ショーの開催やヴェルサイユにインスピレーションを受けたコレクションの発表など、フランスのモード界との関係も深まりました。

また、2024年のパリオリンピックでは、ヴェルサイユが乗馬種目の会場になっています。今はそのための設営も粛々と進めています。
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文=菊地七海 編集=鈴木奈央

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