アート

2023.09.13 08:45

生成AIで新しいアートのカタチを模索 デイシンがAI作品3万点を公開

リリースベース(松村)

プレスリリースより

3D印刷技術で照明器具などをデザイン販売するデイシンは、画像生成AIに描かせた3万点の絵画を発表した。どれもAIに自由に描かせたもので、人の手はほとんど加えられていない。ポイントはプロンプトにある。アーティストの権利を侵害するとか、結局は人真似だとか、いろいろ批判もある生成AIだが、その使い方次第では立派なアートになる。

今回発表された絵画作品は、抽象画が中心。ゲームなどの映像制作では、CG作成や実写撮影の手間をかけずにAIが作ってくれるリアルな映像が重宝されているが、画像生成AIは「リアルな画像を作るのには適していない」とデイシンは考えている。本当のリアルさを求めるには、まだ力不足ということだ。それよりも「得意な才能をのばす」ほうを選んだ。それが抽象画だ。

生成AIでは、文章や音楽なども「プロンプト」と呼ばれる言葉の指示を与えて作品を作らせる。プロンプトが詳しいほど目的に近いものが作れるのだが、デイシンはあえて1つか3つの短い言葉だけを使い、あとはAIの自由にまかせる。ただし、そのプロンプトの出し方に工夫がある。
架空の芸術運動「シン表現主義」をプロンプトに描かせた作品。

架空の芸術運動「シン表現主義」をプロンプトに描かせた作品。


プロンプトには正と負がある。正とは「こういうものを描け」という指示。負は「こういうものを描くな」という指示だ。たとえば、「ゴッホ風にスカイツリーを描け」なんてプロンプトを出すと、生成AIはいっしょうけんめに考えて、そんな風なものを作り出すのだが、デイシンのプロンプトは意地悪だ。

たとえば20世紀のダダイスム画家フランシス・ピカビア風の絵を描かせたいときに、「ピカビア」を正と負の両方のプロンプトにする。つまり、ピカビアのようでピカビアでない、といった指示だ。または、「シン表現主義」という架空の芸術運動の名前を正負のプロンプトに使ったりもした。また、画家クレーの名前を正に、画家モンドリアンの名前を負にした作品などもある。
クレーを正のプロンプト、モンドリアンを負のプロンプトに指定した作品。

クレーを正のプロンプト、モンドリアンを負のプロンプトに指定した作品。


こうした表現は、生成AIを画材として使っているように思える。絵の具のバケツをひっくり返して作品とするようなハプニングアートにも通じるところがある。生成AIがさらに進化してキッチリとリアルな絵が描けるようになるまでの、まだちょっと無邪気な部分が残るAIだからこそのアート手法なのかもしれない。

デイシンの作品は同社のサイトで公開されている。また、そのうち約2000点はポスターとして同社の楽天内サイトで販売されている。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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