アート

2023.11.14

英米との違いは? 日本アート市場の課題と可能性をグローバル比較

(C)Boomer Gallery

ボストン コンサルティング グループ(BCG)が独自の視座と先端アーティストの視点から、アート産業の活性化や企業のアート活用などについて論じる連載コラム。

連載第1回では、当社マネージング・ディレクター & パートナーの岩渕が、本連載のテーマや世界最大級のアートフェア「アート・バーゼル」を訪れた際に感じた、経営とアートの近さについてお話ししました。今回は私、コンサルタントの平岡美由紀が、グローバル市場と比較した日本のアート市場について書きたいと思います。

「全ての人を芸術家に」━━東京藝大で学び、感じること 

まず私・平岡ですが、BCGで働きながら、ロンドンにあるRoyal College of Artに2年間留学し、帰国後、現在は東京藝術大学 先端芸術表現領域の博士課程に在籍しています。「全ての人が芸術家になりうる」という考えに基づき、芸術家ならではの社会への視座や問いかけの原動力となっている「個の感情」を深堀りすることで、内発的な動機付けと行動変容を促す、実験的な取り組みを行っています。

芸術は、油絵や彫刻だけでなく、制作を通じて自分の信念を社会に問いかけ、表現していく全ての行為です。内発的な信念を持ち、新たな視点で社会を捉えること。それによって、アントレプレナーの事業創造や地域の人々の文化的・歴史的な創造活動にもつながりますし、全ての創造活動を活性化できると信じています。

本連載では、そうした博士研究や留学の経験による「虫の目」と、経営コンサルタントとしての「鳥の目」、両方の視点を重ね、日本のアート市場活性化の可能性を考えていきます。

世界のアート市場、日本のシェアはわずか1%

アート市場の規模は世界で約10兆円。シェアランキングの1位は米国(45%)、2位は英国(18%)であり、日本が世界で占めるシェアはわずか1%です。国全体のGDPに占める文化GDPの割合も1.9%で世界13位と、日本は果実を十分に享受できていません(2022年時点)。

果たして、芸術先進国である米国や英国と日本の違いはどこにあるのか。そこから何を学べるのか。両国の文化や政治的背景を踏まえながら、読み解いていきましょう。

世界一の米国。アートの優遇税制は日本でも有効か

アート市場の活性化に向けては、(1)コレクターなどによる需要、(2)取引活性化のための法制度、(3)供給側であるアーティストの視点、3つの視点から総合的に考えていくことが重要です。

米国のアート産業には、約4.5兆円もの市場規模があります。これまでグローバル資本主義と、企業や個人による寄付・投資文化によって牽引されてきました。第二次世界大戦を機に、欧州で迫害された多くのアーティストがニューヨークに移住。ジャクソン・ポロックをはじめとする抽象表現から、大量消費と融合したアンディ・ウォーホルなどのポップアートまで、数々の時代を象徴するアートが誕生しました。そして米国ではアートと経済の街となったニューヨークを中心に、アートが映画やエンタメ産業と力強く結びつきながら、巨大市場を形成しました。
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文=平岡美由紀

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