大規模イベントの「大量のゴミ」問題。解決策は?

2つの課題を解決する切り札

羽山氏は、イベント業界が抱える課題として下記2点を挙げる。

1.イベント実施における環境負荷が大きい

イベント実施における環境負荷の背景には、イベント開催ごとに多くの展示物や装飾などのビルド&スクラップを繰り返してきたことが挙げられる。作っては壊し捨てるを繰り返す従来のイベント実施方法は、SDGsの概念とは真逆である。多くの人材を必要とし、資源やエネルギーが消費され続けてきた。

2. 業界全体で慢性的な人材不足に陥っている

人材不足の要因としては、職人の高齢化、労基法・道交法改正、コロナ禍による職人の業態変化などがある。

この2つの課題を乗り越える方法を考えた際、同社ではISO20121(イベントの持続可能性に関するマネジメントシステム)に着目した。ISO20121は、イベント運営における環境影響の管理に加えて、その経済的・社会的影響についても把握し、イベント産業の持続可能性をサポートするためのマネジメントシステムである。

同社では、独自のイベントサステナビリティ目標を部署ごとに定める。項目ごとに廃棄削減目標を数値化し、達成のための行動指針を策定。毎月部署ごとの達成度合いを検証している。このような一連の仕組みをもとに2020年に認証を取得した。イベント関連の製作・施工を行う企業としては、日本で初めてだという。

2つの課題に対処する取り組み

下記に、この2つの課題解決のために同社が実践する取り組み例を挙げる。

イベント実施における環境負荷の低減

同社では、展示物などの制作時に使用する資源を減らすため、端材を出さない材料カットの方法を開発。加えて、木工造作物は従来、イベント会場で外して崩して廃棄していたが、それらをスタジオに持ち帰り、仕分け、品質の状態を確認し、表面をはがしてメンテナンスするなど次回使用が可能な状態にする。

使用済みの造作物から、使える材料を取り出し、保管・再利用することで、新規の木材使用量の削減につながる。
展示会終了後、資材を回収する
SHOEIベイスタジオ内に設置された、廃棄物分類ガイドライン

同社では従来から、イベントのために作った展示物など、数日間のイベント終了後に撤去、廃棄されてしまうものを持ち帰って再利用する習慣があった。その「もったいない」を価値に変えることをサービス化しリユースシステムを確立してきた。たとえば、木工造作の表面を張り替えることや、デザインや組み立て方を変えることなどが実施されている。

さらに、デザイン面では、他の展示会などにもそのまま使えるデザインを提案することで、装飾物の再利用を図る。これは、環境面での貢献に加えて、おそらく同社と顧客のつながりを強化することにもつながるかもしれない。
ベイスタジオ内では、用途別・サイズ別などに資材が保管されている
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文=和田 麻美子

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