これらの地域への進出の柱の1つとなるのが、B2Bサービスの「YouBiz」だ。YouBizは2022年にリリースされ、従業員数1000人未満の中小企業を対象にマルチカレンシーカードを提供している。チューによると、現在3000社以上がYouBizを利用しているが、これらの企業内のYouTripユーザーがきっかけとなり契約に至ったケースが大半を占めるという。
YouTripのB2B領域への参入について、ライトスピードのロージンダクルに意見を求めたところ、彼女は東南アジアの巨大ネット企業Grab(グラブ)の「Grab For Business」を例に挙げ、強力な消費者基盤を構築したスタートアップがB2Bサービスを提供するケースはよく見られると指摘した。
競合はソフトバンク出資のRevolutら
YouTripは、消費者向けと中小企業向けの両方の分野でローカライズを図っているが、それでも東南アジアに進出している大手フィンテック企業との厳しい競争に直面する可能性がある。ロンドン本拠で、時価総額69億ポンド(約1.26兆円)の上場企業であるWise(ワイズ)は、ユーザーに海外で利用できるバーチャルデビットカードを3枚まで提供している。同社は、2017年にシンガポールでサービスをリリースしている。また、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2が出資するロンドン本拠のフィンテック大手Revolut(レボリュート)は、旅行者や企業向けに160以上の通貨に対応したマルチカレンシー・ウォレットを提供している。同社は、7月にシリーズDラウンドを実施し、評価額330億ドルで8億ドルを調達している。シンガポール経済開発庁(EDB)によると、レボリュートは2019年にシンガポールでサービスをリリースし、東南アジアのユーザー数は、2年間で7万7000人に達したという。
他に中小企業向けサービスを提供する東南アジアのフィンテックスタートアップには、シンガポールに本拠を置くThunes(トゥーンズ)がある。同社は、132カ国で支払いが可能なマルチカレンシーデビットカードを提供している。また、オーストラリアや香港、シンガポールに拠点を持つユニコーン企業Airwallex(エアワレックス)は、企業が従業員向けにマルチカレンシーカードを発行し、オンラインのダッシュボードで利用状況を追跡できるようにしている。
東南アジアの既存銀行では、スタンダードチャータード銀行が2017年に、HSBCが2020年に、UOBが2021年に旅行者向けマルチカレンシーデビットカードの提供を開始している。
(forbes.com 原文)