ただし、これはあくまでも形式上のことでした。今でも日本の芸術大学に「書道科」はありませんし、2年前に政府は書を「登録無形文化財」に指定しました。つまり書を芸術ではなく、文化として認め、守るという流れになったのです。
このままでは、他に「文化」とされている工芸品同様に担い手がいなくなり、海外にいいところだけ搾取され、いずれは衰退の道をたどってしまうかもしれません。そうならないように書を芸術に押し上げて、文化という守られるものではなく、芸術という日本を守るものにしたいと考えています。
——どのようにそれを実現していこうと考えていますか。
正攻法の1つは、書を現代アートにすることです。コマーシャルギャラリーや美術評論家の方々に評価をいただき、コレクターがつき、アートフェアにも出展できる流れをつくりたいです。
先に欧米での評価を高めるのも面白いかもしれません。書にアンティークのイメージ持たれている方も多いようで、私の作品を見て、「歴史をリスペクトしながら現代版にアップデートされていて面白い」と言ってくださる方もいました。
現在はホテルや日本食のお店に作品を飾っていただいたり、SNSでセルフプロデュースをしたりと、全方位的に認知度を高めているところです。書を「日本の芸術」にしていきたい。
冒頭にお話した9月の善通寺でのパフォーマンスでは、プロジェクションマッピングを使ったのですが、デジタルとアナログの融合がすごく面白くて。自分にとって未知の領域の人たちと協力することで、新しいものが生まれることがわかりました。
今は個人で活動していますが、ゆくゆくは様々な領域の専門家とチームを組み、多様な書の見せ方ができたら面白いだろうなと思っています。