今、ガザを巡る国際世論は、日本が唱える「反戦平和」に傾きつつある。ガザ地区には220万人の市民が住む。イスラエルによる地上作戦と空爆によって、ガザ市民の犠牲者は増え続けている。パレスチナの保健当局によれば、10月31日時点で8500人以上が死亡した。イスラエルによる電気や水、燃料の遮断によって、人道危機も高まっている。31日には北部ジャバリアの難民キャンプに対する空爆で50人以上が死亡した。国連総会は10月27日、アラブ諸国が主導した「人道目的の休戦」を求める決議をロシアや中国、フランスなど121カ国の賛成多数で採択した。日本とドイツを含む44カ国は、ハマスを非難する記述がないなどの理由で棄権した。
イスラエルはこの空気の変化を鋭く感じ取っている。イスラエルのエルダン駐国連大使は10月24日、「テロを容認している」として、グテーレス国連事務総長の辞任を要求した。グテーレス氏は同日の国連安全保障理事会の公開会合で「ハマスによる攻撃は、理由もなく起きたわけではないことを認識することも重要だ」と語っていた。イスラエルの強硬姿勢は、国際世論が離れていくことへの恐怖感の裏返しだろう。時間が経つほど、ガザの人々の人道危機は高まり、パレスチナに同情する世論は増えていくだろう。
でも、上川外相が働きかけても、おそらくイスラエルはまともに耳を貸さないだろう。日本がG6共同声明に加わらなかったことで、イスラエルは相当な不満をため込んでいるという。一方、バレスチナやアラブ世界は、日本が米国の同盟国であり、これまでイスラエル寄りの外交を展開してきた事実を知っている。日本がハマスに行使できる影響力もほとんどないだろう。
「反戦平和」の訴えは尊いが、現実の外交は理想論が通る甘い世界ではない。また、台湾など日本周辺の安全保障環境がきな臭くなっている今、理想論だけ唱えていられる余裕もないだろう。今回のガザを巡る事態は、ずっと安眠を楽しんできた日本外交を痛打する機会になったと言えるだろう。
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