経営・戦略

2023.10.31 17:30

オリンパス社長が語る「『いい会社』は、絶えず進化するプロセス」の意味

──21年4⽉にESG担当役員を新設した。22年にはあなた自身がこのポジションを務め、現在は竹内康雄会長が同ポジションを担っている。ESGオフィサーの存在意義は。
 
カウフマン:ESGの考慮すべき事項を自社のビジネスおよび企業戦略に完全かつ確実に統合するためには、ESGの到達目標に直接責任を負うシニアエグゼクティブが必要だった。ESGオフィサーの任命は、ESGの責任を組織の最高レベルに引き上げるための戦略だ。
 
──オリンパスがよりよい会社になるために取り組むべきことは何か。
 
カウフマン:「いい会社であること」は、絶えず進化し続けるプロセスだ。現状に安住してはいけない。当社はガバナンス体制の改善を果たし、世界の競合他社と同様に優れたものとなった。だが、まだ改善できる分野がある。その1つが企業のリスク管理だ。より包括的なアプローチでグローバルリスクを特定し、考慮すべき事項について戦略を見出し、予算編成のプロセスの一部に組み込む必要がある。
 
加えて、ESG戦略の重点領域の1つである「健やかな組織文化」の創出にも力を入れている。これは、従業員が前向きに仕事に取り組む職場環境を整え、リーダーたちが従業員の幸福と個人の成長に心から関心を抱き、協力体制や昇進の機会を提供することを意味する。従業員自らが会社の目的にどう貢献するのかを理解することも重要だ。特に、日本においては多様性(Diversity)、公平性(Equity)、包摂性(Inclusion)は改善の余地がある。
 
──23年6月に、人材の多様性に関する戦略を監督・推進するCDO(チーフ・ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン・オフィサー)を新設した。
 
カウフマン:これはまさに、組織内における多様性や公平性、包摂性に大きな焦点を当てるための戦略的な決定だった。CDOに就任した執行役員の楊文蕾(やん・うぇんれい)は優れたシニアリーダーの1人であり、多様性と男女平等の推進におけるロールモデルの役割も果たしている。ポジションを新設したことは、多様性と包摂性を私たちの組織文化と経営戦略の一部にすることへのコミットメントを強調するものだ。
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瀬戸久美子=文 オリンパス=写真提供

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