どうする? 国をまたいだ規律
新谷:そんな中で各国によって宇宙活動が行われると、国際法上、「どの国がその宇宙活動を許可したか」が問題になり得ます。たとえば他国に影響の及ぶような事故が起きたり、損害が生じたりした場合です。国内法は、そういった場合に備え、ルールに則った安全な宇宙活動を許可するためにも制定されているのです。
実は冒頭でお話しした「国内法の安全基準に基づいた内閣府への申請」は、いわゆる規制法ではありますが、産業界から見れば、活動に制限をかけるというよりも逆に、「ルールを整備することで民間事業者の活動を促す」産業振興の意味合いがあると思っています。
また、宇宙に関する日本の国内法には、安全保障上の観点からつくられたものもあります。たとえば通称「衛星リモセン法」、すなわち「衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律」は、宇宙空間で取得した地球観測衛星データの取り扱いについて定めた法律です。
現状、宇宙空間から地球観測衛星で各国の情報を取得すること自体は原則として自由です。そのため、たとえば高解像度の衛星画像がテロリストなどに悪用される可能性などが考えられます。そこで、日本をはじめ複数の国が、宇宙空間で取得した衛星データの取り扱いについての国内法を定めているのです。こんなふうに、「宇宙」という領域における各国国内法の意義は大きいのです。
もし人工衛星同士がぶつかったら?
──近い将来、日本で起こり得る宇宙に関する訴訟にはどういったものがあり得るでしょう。新谷:まず過去の例でお話しすると、1960年代から宇宙開発が本格化して以降、2009年に1件だけ、別の国同士の人工衛星がぶつかってしまったことがありました。しかも、ひとつは運用中、定常的なミッション期間中の通信衛星でした。
現在はスペースデブリ(宇宙ゴミ)が増加の一途をたどっています。上の件に思いをめぐらせるなら、今後、運用中の衛星に宇宙ゴミが衝突し、衛星が損傷を受けるような事例は起きてくるのではないでしょうか。そうした場合、「そのゴミがどこから出たかわからない」ことが原因で、国際的なトラブルが生じる可能性もあります。そのようなことが起きる前に、早急に制度を整える必要があると思っています。