高齢化日本の鍵は「デスクレステクノロジー」
最後に日本が今後、世界でプレゼンスを高めていくため、どのようにリスキリングを進めていくべきか、後藤氏に尋ねた。「リクルートワークス研究所が3月に発表した予測では、2040年、日本では高齢化のために1100万人の労働力が不足し、特に介護や商品販売など、暮らしに身近な職種で担い手の不足が顕著になるとされています。その中で、いかに日本がテクノロジーを上手く活用してそれらの領域を効率化し、労働人口を増やすかが重要になります。その鍵が『デスクレステクノロジー』です」(後藤氏)
デスクレステクノロジーとは、介護や医療、小売など、オフィスで机の前に座らない仕事に従事する人々、すなわちデスクレスワーカーを支援するデジタル製品やサービスのことだ。海外ではTeslasuitが生体認証データを取り込み、職人の動作を再現・伝授するモーションキャプチャースーツを開発。教育研修にかかる人員やコストの削減を可能にしているほか、FENDIは万引き防止のARアプリを開発。店舗スタッフの数を抑えつつ、万引きの55%削減に成功している。
「デスクレステクノロジーの領域に、高齢者も含め多くの人材をリスキリングすることによって、人手不足を解決でき、日本のGDP引き上げにも繋がります。すると、日本は高齢化先進国として、ソリューションを世界に輸出できるようになります。
そのためには、まず我々現役世代がリスキリングをしておく必要があります。日本がこれからも先進国であり続けられるのか、衰退の一途を辿るのかは、国民一人ひとりがリスキリングできるどうかにかかっています」(後藤氏)
後藤宗明 ◎一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事。SkyHive Technologies 日本代表。2021年、日本初のリスキリングに特化した非営利団体、一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブを設立。2022年、AIを利用してスキル可視化を行うリスキリングプラットフォームSkyHive Technologiesの日本代表に就任。石川県加賀市「デジタルカレッジKAGA」理事、広島県「リスキリング推進検討協議会/分科会」委員、経済産業省「スキル標準化調査委員会」委員、リクルートワークス研究所客員研究員を歴任。政府、自治体向けの政策提言および企業向けのリスキリング導入支援を行う。著書に『自分のスキルをアップデートし続ける「リスキリング」』『新しいスキルで自分の未来を創る リスキリング 【実践編】』。