コロナ禍のヒット商品だが、一過性ではない。ビジネスモデル変革を図解

shutterstock

「中小企業にもイノベーションは起こせるのか?」
 
そんな議論が少なくとも10年前から巻き起こっている。20世紀の「作れば売れる」時代が過ぎ、供給過多と言われる21世紀。そして価値観やライフスタイルの変革を迫られるきっかけとなった新型コロナウイルス。もはや「かつてと同じことをしていて満足いく経営が出来ている」企業を探す方が難しいのではないか。特に、中小企業・小規模事業者となれば尚更である。
 
埼玉県狭山市が設立した中小企業・小規模事業者向け無料経営相談所として「狭山市ビジネスサポートセンター(Saya-Biz)」は2019年4月にオープンした。

私はセンター長としてオープンと同時に就任し、2023年3月までの4年間で約6000件の相談を受けてきた。内容は既存事業の売上アップのための販路拡大や情報発信、新商品開発から雇用確保、中期経営計画策定、そして創業相談と幅が広い。企業規模でみても数十億円から数十万円まで様々である。

中小企業でも「イノベーションは起こせる」

このような環境下で私が「中小企業にもイノベーションは起こせるのか?」という問いに答えるのであれば、それは間違いなく「Yes」である。と同時に「起こしているつもりがない経営者が多い」「起こせないと思い込んでいる経営者が多い」という一言(正確には「二言」か)を付け加えたい。
 
「イノベーション」といっても新製品や新サービスの開発(プロダクトイノベーション)から人員体制や組織力の強化(オーガニゼーションイノベーション)まで5つの切り口が存在する。何も、新技術を開発することだけが「イノベーション」ではない。むしろ重要なのは「新たな価値を生み出し、成果にどこまでつながるか」
 
そう考えると中小企業・小規模事業者の場合、事業をおこなっていく上で投入可能な経営資源が乏しいというデメリットがまず浮かびがちだが、逆にフットワークが軽くトライ&エラーを通じた小さな変革を起こしやすいというメリットもある。すなわち「売上アップを目指して活動していたら、気づいたらイノベーションが起きていた」という例も珍しくないのである。

コロナ禍にヒットした新商品のその後

ここで狭山市のお隣、入間市の金属加工メーカー、有限会社國翔の事例を紹介したい。
 
國翔は創業21年目の金属加工メーカー。ウォータージェット切断機や3Dスキャナ、マシニングセンタ等の機械を駆使して自動車・介護用品・半導体装置など様々な業界向け試作、設計、製造を行っている。

特にウォータージェット切断機は加工時に熱が発生しないため溶けやすい素材にも対応でき、データさえあれば細かなデザインも切削可能であるため、「金属以外でも商売にならないか」という思いでタイルカーペットやオリジナルネームプレート、表札などの製造にもチャレンジしていた。
次ページ > 自社の「強み」を顧客の「価値」に転換

文=小林美穂

タグ:

連載

SGイノベーター【関東エリア】

ForbesBrandVoice

人気記事