最新テクノロジーの活用に必要なのは、キーマンによるアナログな人間関係

(写真左から)宮﨑智宜 吉清汐音 武田光平 森嶋俊弘

Forbes JAPAN 2023年12月号』で特集する「クロストレプレナーアワード」。今回が初の開催となる。クロストレプレナーとは、他社との共創で課題解決に奮闘する新しい姿の起業家で、一社が生み出すよりも何倍も大きなインパクトを生む。私たちが選んだのは「大企業がかかわっていて、2社以上がアセットをもち寄り、社会課題へインパクトをもたらすことのできるプロジェクト」だ。日本が世界に誇る共創プロジェクトを紹介しよう。

深刻化する物流課題、地域課題に立ち向かうべく、ドローン活用が進んでいる。導入には、ニーズをヒアリングし地道に需要と地域との信頼を作る必要があった。

人口減少が進む千葉県勝浦市。市域の3分の2は山地で、配送非効率エリアも多く点在する。そんな同市で今年1月からスタートしたのが、ドローンと陸送を組合わせて勝浦市全域に日用品や食品等を届ける新しい物流サービスだ。次世代モビリティによる航空物流・交通システム開発を進める住友商事が旗振り役となり、サービスを通じて地域内の経済活性化も期待されている。
物流専用ドローン「AirTruck」。1.5mほどの大きさで、機体が傾いても荷物は水平を保つ機構などにより、荷物を安定して運ぶことができる。

物流専用ドローン「AirTruck」。1.5mほどの大きさで、機体が傾いても荷物は水平を保つ機構などにより、荷物を安定して運ぶことができる。

現在はJR上総興津駅前とJR勝浦駅前にドローンデポ(物流拠点)を開設し、買い物代行やフードデリバリー等のサービスを提供。陸送はセイノーHD、ドローン配送はエアロネクストの子会社のNEXT DELIVERYが担い、陸送では時間を要するエリアでドローン配送に切り替え、ドローン配送場所から各家庭までのラストワンマイル配送は地元住民と協力し配送する仕組みを実装すべく取り組んでいる。ドローンはエアロネクストが開発したドローン「AirTruck」を使用し、制御にはKDDIスマートドローンの通信技術や運航管理システムが採用されている。

ドローン配送を社会実装するうえでの課題のひとつが社会受容性だ。ドローン配送がいまだ一般的でないなか、鍵を握るのがNEXT DELIVERYに2023年4月に入社した吉清汐音だ。勝浦市民である吉清はデポの店長を務め、地元住民の困りごとや新たなニーズのヒアリングも行う。こうした地域人材による運営体制で社会受容を推進する。今年9月からはドローン配送の実証実験が本格スタートした。住友商事の武田光平は「地元商店はじめ、多くの関係者との協力体制を構築できてきたことが大きな成果です。ドローンと陸送を組み合わせた物流インフラを活用すれば、防災や密漁対策など、勝浦市の物流以外の地域課題解決の可能性も見えてきました」と語る。

ドローン配送は人口減少社会における物流網を維持する社会インフラとなりうるのだろうか。吉清は「人々の生活基盤として信頼の獲得に地道に取り組んでいきたい。勝浦は台風が来ると通行止めがよく起きますが、そうした非常時に避難所や孤立した集落へドローンで荷物を届けられるようにしたい。『あって良かった』『つくっておいて良かった』と思われることが目標」と語る。


宮﨑智宜◎セイノーホールディングス 新スマート物流推進PJ 東日本プレイングマネージャー。22年より本事業参画。

吉清汐音◎NEXT DELIVERY勝浦拠点長。勝浦で生まれ育った知見を活かし、店長業務に従事。

武田光平◎住友商事でAdvanced Air Mobilityや量子コンピュータといった最先端技術に関する事業の開発に取り組む。

森嶋俊弘◎KDDIスマートドローン ソリューションビジネス推進2部 部長。22年よりドローン物流事業化を推進。

文=堤 美佳子 写真=吉澤健太

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年12月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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