深刻化する物流課題、地域課題に立ち向かうべく、ドローン活用が進んでいる。導入には、ニーズをヒアリングし地道に需要と地域との信頼を作る必要があった。
人口減少が進む千葉県勝浦市。市域の3分の2は山地で、配送非効率エリアも多く点在する。そんな同市で今年1月からスタートしたのが、ドローンと陸送を組合わせて勝浦市全域に日用品や食品等を届ける新しい物流サービスだ。次世代モビリティによる航空物流・交通システム開発を進める住友商事が旗振り役となり、サービスを通じて地域内の経済活性化も期待されている。
![物流専用ドローン「AirTruck」。1.5mほどの大きさで、機体が傾いても荷物は水平を保つ機構などにより、荷物を安定して運ぶことができる。](https://images.forbesjapan.com/media/article/66755/images/editor/6e7e6717b304d33a4549797056e84ba0238c647d.jpg?w=1200)
ドローン配送を社会実装するうえでの課題のひとつが社会受容性だ。ドローン配送がいまだ一般的でないなか、鍵を握るのがNEXT DELIVERYに2023年4月に入社した吉清汐音だ。勝浦市民である吉清はデポの店長を務め、地元住民の困りごとや新たなニーズのヒアリングも行う。こうした地域人材による運営体制で社会受容を推進する。今年9月からはドローン配送の実証実験が本格スタートした。住友商事の武田光平は「地元商店はじめ、多くの関係者との協力体制を構築できてきたことが大きな成果です。ドローンと陸送を組み合わせた物流インフラを活用すれば、防災や密漁対策など、勝浦市の物流以外の地域課題解決の可能性も見えてきました」と語る。
ドローン配送は人口減少社会における物流網を維持する社会インフラとなりうるのだろうか。吉清は「人々の生活基盤として信頼の獲得に地道に取り組んでいきたい。勝浦は台風が来ると通行止めがよく起きますが、そうした非常時に避難所や孤立した集落へドローンで荷物を届けられるようにしたい。『あって良かった』『つくっておいて良かった』と思われることが目標」と語る。
宮﨑智宜◎セイノーホールディングス 新スマート物流推進PJ 東日本プレイングマネージャー。22年より本事業参画。
吉清汐音◎NEXT DELIVERY勝浦拠点長。勝浦で生まれ育った知見を活かし、店長業務に従事。
武田光平◎住友商事でAdvanced Air Mobilityや量子コンピュータといった最先端技術に関する事業の開発に取り組む。
森嶋俊弘◎KDDIスマートドローン ソリューションビジネス推進2部 部長。22年よりドローン物流事業化を推進。