海外

2023.10.05

米航空大手、Elroy Airの「物流用eVTOL」100機を本格運用へ

eVTOL貨物機「シャパラル」(Elroy Air)

eVTOL(電動垂直離着陸機)のスタートアップのElroy Air(エルロイ・エア)は9月5日、米国の航空サービス大手のBristow Group(ブリストウ・グループ)から最初のデポジットを受け取ったと発表した。同グループは、14カ月前にエルロイ・エアからハイブリッドeVTOL貨物機を約100機購入する意向書に署名していた。

「ブリストウ・グループはMOU(基本合意書)を修正し、デポジットを支払うことで最初に出荷する航空機の一部を確保した」と、エルロイ・エアのコフィ・アサンテ副社長は述べた。アサンテは、ブリストウが支払ったデポジットの額については明らかにしなかった。

サウスサンフランシスコに本拠を置くエルロイ・エアが開発したハイブリッド型のeVTOL貨物機の「Chaparral(シャパラル)」は、300~500ポンド(約136~227kg)の貨物を最大300マイル(約483km)空輸することが可能で、離着陸に空港を必要としない。

機体は、カーボン複合材で作られ、8つの垂直離着陸用ローターに加え、前方の水平巡行用プロペラ4つと高翼を備えている。シャパラルは基本的にはコンピュータ制御による自律飛行で飛ぶが、航空局が要望した場合は、遠隔操縦も行える。

ブリストウ・グループは、遠隔地のエネルギー企業向け輸送や捜索救助を行っているが、シャパラルの導入によってこれらの業務を補完するほか、急成長している貨物輸送への参入も目指している。

「ロジスティクスや医療、エネルギーの分野で一刻を争う貨物の輸送に対する需要が高まっている。エルロイ・エアとの提携によって、これらの需要を満たすことができる」とブリストウ・グループの上級副社長のデイブ・ステパネクは声明で述べた。

エルロイ・エアは、米空軍との関係を通じて軍向けにも輸送サービスを提供している。アサンテは、あらゆる場所から離着陸し、自律的に貨物を配送・集荷できるシャパラルの能力こそが、軍と企業・人道支援の両面で役立つ「デュアルユース」の鍵だと述べている。

「捜索や救助を行う際は、貨物用ポッドの代わりに監視用機器を搭載し、捜索が行える。また、山火事でヘリコプターを使って消防士に物資補給を行う場合、パイロットを危険にさらすことになるが、我々のeVTOLはそうした任務を支援することができる」とアサンテは話す。

30億ドル(約4400億円)相当の受注を獲得したエルロイ・エアは、7月に2人の実力者を経営陣に加えたと発表した。自動運転エアタクシー企業でエンジニアリング担当副社長を務めたアレックス・ブレイクは、チーフ・オブ・スタッフとしてエルロイ・エアの創業メンバーと会社の成長と成熟化に取り組む。また、エアバス傘下のA³(エイ・キューブド)でeVTOLヴァハナ(Vahana)の開発チームを率いたザック・ラベリングは、エンジニアリング担当副社長に就任した。

「我々は、幸運にも優秀な人材を採用することができている。彼らは、我々がこれから進めようとしているプロセスを国内外で経験してきており、専門知識を提供してくれている」とアサンテはいう。エルロイ・エアは2025年までに空軍と初期の民間顧客に最初の航空機を納入する予定という。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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