料理は22皿が提供されるテイスティングコースで、ベジタリアンかノンベジタリアンの2種類。インド各地の味を一口サイズの料理で表現している。
この日は「シャクティ」と呼ばれる南インド・ゴアのココナッツカレーに地元産のイカやウニを合わせたものや、北インドのカコリのキーマカレーに自家農園の卵を使ったものなどが提供された。
どれも何かしらのスパイスが入っているが、そのバランスがどれも異なるので、食べ飽きない。「カレー粉」と日本ではひとくくりにされがちな味に、これだけの多様性があったのかと驚いた。インド料理の要となるスパイスペーストも自家製で、この日は7種類の異なったスパイスペーストを使ったという。
また、ペアリングのワインも、小規模生産者のものを使うなど、配慮がされている。
コースラ氏によると、インドではヒンズー教で神聖な生き物とされている牛が、プラスティックごみを飲み込んで窒息死することが相次いだことなどが理由で、プラスティックの規制に力を入れているという。昨年には使い捨てプラスティック皿やコップなどの使用のみならず、生産も禁止されるようになった。
バンコクでは交通渋滞がひどく、その解消のためにこれまで庶民の食を支えてきたストリートフードの規制が行われ、それと同時に手軽に食べられる「コンビニご飯」を利用する人が増えている。コースラ氏は、身近な食から人々の食生活を変えていきたいと、セブン・イレブンと共同で、食材や栄養バランスにこだわったコンビニご飯の監修もしている。
また、コロナ禍中は、路上生活者に対して5万食もの食事を提供するなどの社会貢献も行なった。「自分の行動で社会を変革できるとは思っていない。あくまでも、身近な問題に取り組むことで、近くの人を幸せにしたい」という有言実行だ。
2020年に、別のレストラン経営者でもある妻、チャニーさんと結婚し、3カ月になる娘がいる。自家農場に将来的には農業体験もできる宿泊施設も作る予定で、自分のレストランで提供する食材が、100%自家農園からのものになるように、搾乳の施設も作るつもりだという。
コースラ氏が見ているのは、子どもたちが過ごす未来。自分の取り組みを通して、それが少しでも良いものになって欲しいと願っている。