食&酒

2023.07.09 18:00

「遺跡だけではない」エジプトへ カイロで国際的な食イベント

カイロ・フード・ウィークのオープニングイベント

悠久の時が流れる国、エジプト。古代エジプトの人々は、黄金のことを「太陽の汗」と考えていたのだという。

この国は、ローマ帝国時代から、豊かな日差しが降り注ぎ、黄金色の小麦が実る土地として知られてきた。ナイル川が運んでくる肥沃な土が豊穣さをもたらし、今から2000年以上前から「帝国のパン籠」として、「パンとサーカス」と呼ばれる社会構造を食から支えてきた。そして現在も、就業人口、生産額、外貨獲得というあらゆる面で、エジプトは農業国ということができるだろう。

そのエジプトは人気の観光地でもある。コロナ前の2019年は海外からの観光客が1300万人、GDPに占める観光業の割合は12%。翌20年はコロナ禍で同割合は3.8%と落ち込み、観光業に従事する人の数も10%から6.2%に減少。3人にひとりがこの業界を離れることになった。それから2年あまり。エジプトは今、新しく生まれ変わろうとしている。

例えば、7世紀からの歴史がある首都カイロは、以前より人口増加や過度の渋滞などが問題視されており、首都移転の計画が進行中だ。クフ王のピラミッドとギザに向かう車の中で、工事現場が多いことに気づいてドライバーに尋ねると、「日本の支援で新しい博物館ができる。観光客の増加を見込んで、ピラミッド地区への入り口をもう一つ建設中だ」と嬉しそうに話していた。

「新しいエジプト」の変化の一つが、食に対するアプローチだ。世界四大文明の一つを擁する国ながら、これまで“美食の旅先”というイメージは持たれてこなかったと言えるだろう。そんなエジブトの食を変えようと、6月に第一回「カイロ・フード・ウィーク」が開催された。
カイロ・フード・ウィークのオープニングイベント(筆者撮影)

カイロ・フード・ウィークのオープニングイベント(筆者撮影)


カイロ・フード・ウィークの主催者でエジプト人写真家のシェリフ・タミン氏は、「エジプトの食といえば、コシャリと呼ばれるストリートフード(パスタや茹でた米や豆に唐辛子の効いたトマトソースをかけたもの)など、シンプルなものばかり。鳩に大麦を詰めて焼き上げた伝統料理などはあっても、今世界で起きているような体験型の美食の店というのは存在しなかった」と語る。

今回のフードイベントには、近隣で美食文化が花開きつつあるドバイのみならず、ヨーロッパや南米、アジアから数多くのシェフを招聘。10以上ものスペシャルイベントでファインダイニングの食がゲストに振舞われた。
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文=仲山今日子

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