意見の二極化が進むことで組織には新たな課題がもたらされる
かつて、これほどまでに分断が進んだことはない。ピュー・リサーチ・センターによれば、米国の民主党と共和党のイデオロギー的な隔たりは、過去50年間のどの時期よりも大きくなっているという。実際、米国は他のどの民主主義国よりも急速に二極化している。リバモアはこのことを自分の仕事の中で実感している。彼は、組織の「多様性、公平性、インクルージョン」 (DE&I) の分野での活動が精査され、 「覚醒派」(woke)か「反覚醒派」(anti-woke)かのいずれかと判断され、組織が政治的議論の十字砲火に巻き込まれることが増えているという。
最近の議論の例としては、カーストによる差別を違法とする法案がカリフォルニア州に提出された際の激しい議論が挙げられる。法案反対派は、ヒンズー教徒を不当に中傷していると主張した。ギャビン・ニューサム知事は先週、この法案に拒否権を発動した。
リバモアは「政治的立場がどうであれ、そして正義と差別の観点から話しているのか、それともインクルージョンの観点から話しているのかにかかわらず、多様性が組織における非常に現実的な要素であることに変わりはありません」という。「政治的、外部的に起こっていることが、組織にポリシーの形成をどのように迫っているのかを、この1年観察していますが、大変興味深いことです」
二極化は、社会的期待と職場内のインクルージョンの醸成というコミットメントとの微妙なバランスをうまく調整しなければならないという、組織の課題を浮き彫りにする。
カリフォルニア州のカースト法案に対する反発が示すように、多くのDE&Iキャンペーンの特徴でもあるが、人々を異なるものにしているありとあらゆる特徴を強調しすぎる組織には危険がともなう。似ている点ではなく、異なる点に集中しすぎると、論点が狭くなりすぎて、協働の妨げになるのだ。
リバモアは「私たちは、自分の経験を過度に強調しすぎているのではないか、そしてそうすることによって、共通の人間性の感覚を損なっているのではないかと、いささか危惧しています」という。「私たちは、誰かの経験を理解する一方で、いっしょにプロジェクトに取り組むときには、それだけに焦点を当てないようにして、二極化した価値観を多少なりとも受け入れなければなりません」