もっとも、この中途半端な攻撃自体は特段注目すべきものではない。ウクライナ軍が南部で引き続き進めている反転攻勢や、ロシア軍の6個ほどの連隊や旅団がドネツク市の北の町アウジーイウカ周辺で行っている攻撃に比べれば、たいしたものではない。
実際、失敗に終わったこの攻撃については、ウクライナ軍参謀本部による11日の戦況報告でも軽く触れられている程度だ。
目を引くのはむしろ、撤退した第39旅団が、少なくとも1体の死体とともに後に残していった装備だ。同旅団はMT-LB装甲けん引車をベースに一風変わった戦闘車両を何両か自作しているが、今回、ドネツク市の南西にある集落ノボミハイリウカ方面を攻撃した時に、うち少なくとも2両を失った。
#Ukraine: Two Russian improvised personnel carriers based on MT-LB armored vehicles were damaged and abandoned after running over anti-tank landmines during the recent Russian attack on Avdiivka, #Donetsk Oblast. pic.twitter.com/ZkGNvfZ1op
— 🇺🇦 Ukraine Weapons Tracker (@UAWeapons) October 11, 2023
第39旅団のDIY戦闘車両は、重量13トンのMT-LBに23mm機関砲を追加し、さらに乗員を含めて11人が乗り込めるオープンコンパートメントを設けたものだ。旧ソ連で1970年代に開発され、独立後のウクライナで2000年代初めまで製造されていたMT-LBは、主に数が多いという理由から即席車両のベースとしてよく使われている。
DIY車両は第39旅団ご自慢の装備であり、なかでも走行中に兵士が立ち上がって周囲を見渡せるオープンコンパートメントが売りだ。「歩兵は装甲部の後方に乗り、状況を監視する」と、通信アプリ「テレグラム」のあるユーザーはこの車両について説明している。「兵員の退避や弾薬の積み降ろしもしやすい」
ただ、遺棄された2両の乗員らは念のため、オープンコンパートメントに取り外し可能な屋根を付けていたようだ。
この車両の最大の問題は、MT-LBベースのどの戦闘車両にも言えることではあるが、装甲の防護が心もとないことだ。MT-LBの装甲は紙のように薄く、最も厚い部分でも14ミリしかない。機関銃の弾ならかろうじて止められる程度だろう。
そのうえ、車体は古く、スピードも遅く、機械としてもいまいち信頼できない。ウクライナ側もMT-LBを改造した戦闘車両をいろいろつくっているが、そのひとつは荒れた地形では動きが非常に鈍重になり、歩兵が徒歩で簡単に追いつけるほどだ。
第39旅団は、MT-LBの騒音を減らすために装軌(キャタピラ)と排気装置を改良したという。それはともかく、このMT-LB戦闘車両には別の大きな欠点がある。ほかならぬオープンコンパートメントである。この開放的なスペースは、そこに入る歩兵に対する迫撃砲などの野砲や、爆薬を積んだドローン(無人機)による直接攻撃をどうぞしてくださいと言っているようなものだ。
皮肉にも、10日ごろに第39旅団のMT-LB戦闘車両を破壊したのは、そうした上からの攻撃ではなかった。それは地雷だった。少なくとも2両が地雷を踏み、装軌が外れて行動不能になった。乗員や歩兵は車両から脱出したようだ。だが、少なくとも兵士1人は、車両後部の出口から1步出たところでこと切れた。
(forbes.com 原文)