宇宙

2023.10.12 17:00

大きく軌道が傾いた彗星が地球の「現実的脅威」となりうる理由

米セントラルフロリダ大学の天文学者ヤン・フェルナンデスは、論文共著者ではないが、電子メールでの取材に、現在の彗星はすべて、数十億年前に原始惑星系円盤内の微惑星だったものの破片だと語った。フェルナンデスによると、微惑星の大半は惑星に取り込まれるか、あるいは太陽系から完全に投げ出された。少数がオールトの雲に投げ込まれたが、ZTFは恐らくそのうちの1つだろう。

だが、これらの散在する彗星が、銀河系の潮汐力との相互作用や、通り過ぎる恒星との遭遇によって、内太陽系(木星軌道より内側)の方向に押し戻される可能性があると、ボーリンと研究チームは論文の中で指摘している。

このような彗星を懸念すべき理由

オールトの雲には無数の彗星が「貯蔵」されているが、すべてが暗すぎるために地球からは検出できないと、シュライヒャーは説明する。軌道が撹乱されることにより、一部の彗星が内太陽系に進入する場合に限り、人間にとって潜在的に脅威となると、シュライヒャーはいう。

カナダのオンタリオ州にあるサドベリー盆地は、太古の時代に起きた、大きな軌道傾斜角を持つ彗星の衝突が引き起こした破壊を最もよく示す事例の1つだ。NASAによると、約18億年前に地球に衝突し、サドベリー盆地が形成される原因となった天体は、当初は小惑星と考えられていたが、後に彗星と判断されたという。衝突の衝撃が非常に大きかったため、実際に地殻に穴が開き、直径約200kmにおよぶクレーターができたと、NASAは指摘している。

ZTF彗星は、太陽系の公転軌道面(黄道面)とほぼ垂直な軌道を進み、内太陽系に入ってきた。オールト雲の彗星が非常に危険である理由の1つが、これだ。
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翻訳=河原稔

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