宇宙

2023.09.24

地球に似た未知の惑星、太陽系外縁部に存在か

太陽系外縁部に存在する可能性がある未発見の惑星の想像図(Fernando Peña D'Andrea)

太陽系の外縁部に未知の惑星が存在する可能性が、第8惑星の海王星の外側にある天体が描く奇妙な軌道から明らかになった。

学術誌The Astronomical Journalに掲載された研究論文によれば、太陽から遠く離れたカイパーベルトにある天体の軌道を調査した結果、太陽系に第9の惑星が存在する可能性が示唆された。

カイパーベルト(エッジワース・カイパー・ベルトとも呼ばれる)は、海王星の軌道の外側の太陽系外縁部にある円盤状の領域で、太陽からの距離は約50AU(AU=天文単位、地球と太陽の距離)。冥王星、マケマケ、エリスなどの準惑星がある。彗星や、天文学者らが「太陽系外縁天体(TNO)」と呼ぶ一部の奇妙な天体も存在している。

海王星の向こう

TNOの1つであるセドナは、氷でできた、赤みを帯びた天体で、米国の天文学者マイケル・ブラウンが2003年に発見した。海がある可能性があり、離心率が大きく細長い軌道を持つため、太陽の周りを1周するのに1万1400年かかる。

セドナは過去にも、いわゆる「第9惑星」の存在を示す有力な証拠とされてきたが、今回の論文でなされているのはこれまでとは違う主張だ。

論文によると、セドナの軌道だけでなく、いくつかの他のTNOが持つ傾斜軌道と、より一般的に、海王星の重力の影響が及ばない軌道を持つTNOの大集団の存在も、地球サイズの惑星があるとすれば説明できる可能性があるという。

遠方に存在するカイパーベルトの軌道構造(上からの様子)(Patryk Sofia Lykawka)

遠方に存在するカイパーベルトの軌道構造(上からの様子)(Patryk Sofia Lykawka)


地球に似た惑星

太陽系天体の重力相互作用のコンピューターシミュレーション結果により、地球に似た惑星の存在を仮定すれば、これら一部のTNOの変則性を全て説明できることが示唆されている。論文によると、その惑星の必要条件は、地球の約1.5~3倍の質量を持ち、太陽から約250~500AUの距離にあり、軌道が太陽系の公転面に対して30度傾いていることだ。論文ではこれを「カイパーベルト惑星(KBP)シナリオ」と呼んでいる。

論文を執筆した近畿大学のソフィア・リカフィカ・パトリックと国立天文台の伊藤孝士は「地球に似た惑星と特異な軌道上にある複数のTNOが太陽系外縁部に存在する」と予測。「KBPシナリオの結果は、遠く離れた太陽系外縁部にまだ未発見の惑星が存在することを裏付けている。(さらには)新たなTNO集団の存在も予測される」としている。
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翻訳=河原稔

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