米航空宇宙局(NASA)が32億ドル(約4500億円)をかけて建設中の次世代宇宙望遠鏡「ナンシー・グレイス・ローマン」により、質量が地球と同程度の浮遊惑星候補が約400個見つかる見通しという。
研究チームは、9年間にわたる観測結果をまとめた論文を2本発表。その共著者で、NASAゴダード宇宙飛行センターの上級研究員デービッド・ベネットは「天の川銀河には恒星の20倍、数兆個の自由浮遊惑星が単独でさまよっていると推定しています」と説明している。「これは、天の川銀河の自由浮遊惑星の数を、地球より質量の小さい惑星の感度で測定した初めての例です」
研究チームは、質量が地球と同程度の浮遊惑星の数が、より重い浮遊惑星よりも多いことを発見。そうした浮遊惑星の候補も1個特定した。
表面が氷で覆われ、質量が地球と同程度の自由浮遊惑星を描いた想像図(NASA’s Goddard Space Flight Center)
ローマン望遠鏡で浮遊惑星を発見へ
2027年5月までに打ち上げを予定しているローマン宇宙望遠鏡の主鏡は、ハッブル宇宙望遠鏡と同じ直径2.4mだが、搭載される広角レンズによって視野は100倍になる。このため、天の川や他の銀河をハッブルより100倍早くマッピングすることが可能であり、宇宙で形成されたり星系から弾き出されたりした孤立天体である浮遊衛星を容易に発見できる。他の宇宙望遠鏡と比べて、浮遊衛星に対する感度が10倍高いとされる。
重力マイクロレンズ
ローマン望遠鏡が非常に優れている点は、小さい天体を観測する能力にある。小さい天体の後方にある恒星から発せられた光は、天体の重力によって歪められ、拡大される。その結果、望遠鏡から見た恒星の位置がわずかに変化することで、浮遊惑星の存在がわかる。これは重力マイクロレンズと呼ばれる観測手法だ。この手法で1個の天体を観測できるチャンスは数百万年に1回だが、現在検出が不可能な新しいタイプの系外惑星の発見に役立つと期待されている。
片方の論文の主著者である大阪大学の住貴宏教授は「重力マイクロレンズは、質量の小さな自由浮遊惑星や、原始ブラックホールなどの天体を発見する唯一の方法です」と説明。「重力を使って、これまで直接見ることが叶わなかった天体を発見することは、非常に心躍るものです」と述べている。
かつて広視野近赤外線サーベイ宇宙望遠鏡(WFIRST)と呼ばれていたローマン望遠鏡は、銀河系に存在する地球型惑星などを発見することを目指している。
(forbes.com 原文)