ダークマター星はこれまで理論上の存在だった。明るさは最大で太陽の100億倍ともされ、現在私たちが見ている星々が形成される前の宇宙誕生直後に存在したと考えられている。
米科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された論文によると、当初銀河だと考えられていた3つの天体を詳しく調べたところ、 ダークマター星の特徴とされる雲状の天体であることが分かった。
宇宙の夜明けの始まりに存在したとされるダークマター星は、ダークマター(暗黒物質)粒子を燃料供給源としていたと考えられているため、特別な重要性を持っている。
ダークマターの謎解明か?
物理学で最大級の謎の一つであるダークマターは、宇宙の物質の約85%を占め、重力とのみ相互作用すると考えられている。ダークマターは、目に見えない新しいタイプの素粒子から成ると考えられている。米航空宇宙局(NASA)によると、光やエネルギーを吸収・反射したり、発したりすることもない。そのため直接検出することが不可能で、今のところ仮説上の物質だが、その存在は他の物質に与える影響から推論できる。
今後の追跡観察は必要だが、もしダークマター星の発見が確認されれば、ダークマターの性質を解明できるかもしれない。
論文の共著者であるテキサス大学オースティン校のキャサリン・フリース教授(物理学)は「新しいタイプの星を発見することはそれだけで十分興味深いことですが、そのエネルギー源となっているのがダークマターであることが分かれば、大発見となります」と語る。
謎を解く
3つの天体(JADES-GS-z13-0、JADES-GS-z12-0、JADES-GS-z11-0)が本当にダークスター星だとすれば、ダークマターの謎を明らかにするだけでなく、ウェッブ望遠鏡の「宇宙の夜明け」の画像に関する謎が解けるかもしれない。ウェッブはこれまでに、標準宇宙論に従うとビッグバン直後に存在したものとしては大きすぎる銀河を多数見つけている。
フリースは「今回のような全く新しい提案は常に確実性が低いため、標準理論に何らかの調整を加える必要がある可能性は高いでしょう」と指摘。「しかし、もし初期銀河のように見えるこれらの天体の一部が実際にダークマター星であるとすれば、銀河形成のシミュレーションは観測結果とより一致します」と語った。
今月上旬には、ウェッブを使用している研究チームが、史上最も遠く、ビッグバンからわずか5億7000万年後に存在した超大質量ブラックホールを発見した。
(forbes.com 原文)