宇宙

2023.07.15

重力波の観測で「ダークマター」発見も 国際研究チームが発表

合体する2つの超大質量ブラックホールのシミュレーション(NASA)

先日の「背景重力波」検出のニュースは天文学界を揺るがしたが、この新発見を基に宇宙のしくみを解明する取り組みはすでに始まっている。

英ウェールズのカーディフ大学で今月開かれた2023年全英天文学会議で、宇宙論学者の国際研究チームが、合体するブラックホールから発せられる重力波を観測することで「ダークマター(暗黒物質)」の正体を暴けれるかもしれないと発表した。

重力波とダークマターを理解することは難しいものの、不可能ではない。

重力波とは、宇宙のどこかで起きた激しい出来事によって引き起こされる時空の波紋だ。

背景重力波とは、宇宙の歴史の中で幾度なく発生してきた波紋が積み重なったものだ。おそらく、互いを高速で周回する超大質量ブラックホール連星によって生み出された。

ダークマターは、目に見えず検出不能な仮説上の粒子を表すため、天文学者が考案したいくぶん滑稽な名前だ。ダークマターは光やエネルギーを吸収・反射したり、発したりすることはないが、宇宙全体の物質の約85%を占めていると考えられている。唯一、重力とは相互作用すると考えられている。

カギを握るブラックホール

ダークマターが他の粒子、例えば原子やニュートリノと衝突できるかどうか、あるいは、他の粒子の影響を受けることなくその中を通過できるのかどうかはわかっていない。このため、全英天文学会議で発表を行った研究チームは、コンピュータシミュレーションを使って、重力波の信号がさまざまな種類の重力波とどのように作用し合うのかを調べた。

その結果、未来の望遠鏡を使い検出できるであろうブラックホールの合体現象を観測し、その数を数えることによって、ダークマターが何と相互作用しているかを明らかにできることがわかった。これは、ダークマターの正体解明に役立つだろう。

ハローに隠された秘密

高密度のダークマターハロー(自己重力によって集まったダークマターの塊)がニュートリノ(電荷を持たない素粒子)と衝突すると、その構造が分散し、最終的によ銀河が形成される数が減ると考えられている。結果として、重力波を使って検出されるブラックホール合体の数は少なくなる。

よって、重力波を利用してブラックホールの合体が検出できるかどうかを探ることで、何がダークマターと相互作用しているかを推論できると研究チームは考えている。

研究チームのメンバー、オーストラリア・シドニー大学のマーカス・モスベックは「宇宙の中を妨げられることなく通過する重力波は、初期宇宙を観察するまたとないチャンスを与えてくれます。次世代の干渉計は、はるか遠い場所で起きる個々の事象を検出できるほどの感度を持つでしょう」と語っている。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫・編集=遠藤宗生

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