宇宙

2023.05.17

天体学史上最大の爆発を観測、謎の現象に科学界困惑

恒星が超大質量ブラックホールに吸い込まれた直後の様子を描いた想像図(Getty Images)

恒星は寿命を迎えると、超新星となって爆発する。それはすべての恒星にとって避けることのできない運命だ。しかし、私たちの天の川銀河では、超新星は17世紀以来、観測されたことがない。

しかしつい最近見つかったのは、天文学者にとってさらにめずらしく、さらに大きな混乱を招くものだった。超新星より10倍も明るい宇宙の大爆発だ。

しかも、数カ月程度で見えなくなる超新星と異なり、その爆発は3年以上続いているのだという。

この爆発の起源が何だったのかという疑問は、天文学者たちを悩ませている。

「AT2021lwx」と名付けられたこの現象は、80億光年の彼方で観測された。宇宙は膨張していることから、実際に爆発したのは宇宙誕生からおよそ60億後だ。

爆発の起源は?

もし超新星でないのなら、恒星が超大質量ブラックホールに吸い込まれて消滅する現象「潮汐破壊現象(TDE)」かもしれない。しかし、AT2021lwxはこれまでに知られているTDEより3倍も明るい。

5月11日、科学誌「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」に掲載された最新論文はAT2021lwxについて、巨大なガスの雲が超大質量ブラックホールに激しく破壊されたことで起きた爆発だった可能性を指摘している。ガスの一部がブラックホールにのみ込まれ、残されたガスに衝撃波が広がったと考えられている。

英サウサンプトン大学の研究フェローで、本研究を率いたフィリップ・ワイズマン博士は「この種の現象は極めて珍しいものだが、そのエネルギーはすさまじく、銀河の中心が時間と共に変化していく際の重要なプロセスだ」と説明している。

どうやって爆発を検出したのか?

AT2021lwxは2020年、米カリフォルニア州のツビッキー掃天観測施設が最初に発見した。「偶然だった。あるタイプの超新星を探していた時、私たちの検索アルゴリズムによってフラグが立てられた」とワイズマンは語る。「超新星や潮汐破壊現象のほとんどが、消えるまでに数カ月しかかからない。2年以上も輝き続けるものは、非常に珍しい」

もう1つの記録的大爆発

2022年10月9日には、宇宙で最強クラスの爆発である「ガンマ線バースト(GRB)」が太陽系に到達している。「GRB 221009A」と呼ばれるこの爆発は10時間しか続かなかったが、これまでに見えたどんなものよりも70倍明るく、1万年に1度の現象と言われた。

ガンマ線バーストは、加速された粒子が光速に近い速度で宇宙に噴射される現象であり、超新星が起源と考えられているが、爆発が検出された直後に観測されたことはない。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫・編集=遠藤宗生

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事