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2023.10.12 17:30

インテルを下し、エヌビディアに挑む「半導体ウォーズ」で復活したAMD

Forbes JAPAN編集部
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エヌビディア以外にも、AMDの行く手には新たな脅威が潜んでいる。AMDの顧客の一部は、自前のチップ開発に乗り出している。半導体大手への依存を軽減するための動きだ。例えばアマゾンは、18年に自社のAWS事業のためのサーバー用チップを設計。グーグルも10年近くを費やして独自のAI用チップを開発し、テンソル・プロセシング・ユニット(TPU)と名付けた。メタでさえ、自社でAIハードウェアを開発する予定だ。

スーは、顧客がいずれ競合になりうる事実を気にしてはいない。だだ、そういった企業が、AMDが何十年もかけて築いてきた技術的な専門知識や技能なしにできることは限られていると考えている。

スーは、AI用チップ市場に攻め込める位置にいるが、好調がどれほど容易に転落に転じうるかも知っている。やるべき仕事はまだあると話す。

「AMDが優良企業であることは証明できたと思いますが、今度は世の中に貢献し、レガシーを生み出している偉大な企業であることを証明しなければと思っています。取り組みがいのある課題です」

AMDは、2023年6月に行われた中国の「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)上海」にも展示ブースを出展。(VCG / Getty Images)

AMDは、2023年6月に行われた中国の「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)上海」にも展示ブースを出展。(VCG / Getty Images)

AMD の強力なライバル

インテル 
1968年創業。半導体メーカー。本部は米国カリフォルニア州サンタクララ。半導体メモリなどを製造、71年に世界初のマイクロプロセッサーを発表。85年からはコンピュータのCPUの開発、製造に注力、一世を風靡した。

エヌビディア
1993年創業の半導体メーカー。本部は米国カリフォルニア州サンタクララ。共同創業者でCEOのジェンスン・フアンは、スーの親戚(親のいとこ)。同社のGPUは、映像処理やAIのエンジンとして急激に人気が高まっている。


AMD◎1969年創業の半導体メーカー。本社は米国カリフォルニア州サンタクララ。ジェリー・サンダースらが共同創業した。インテルを上回る処理速度をもつプロセッサーを開発したことで、主要な半導体メーカーの仲間入り。2010年代には業績が悪化したが、新しいチップZenなどの開発で再び存在感を増している。

リサ・スー◎1969年、台湾・台南市生まれ。数学者と、会計係から転じた起業家を両親にもち、3歳のときに一家で米ニューヨークに移住。MITで電気工学を学び、博士号を取得。IBMで銅配線半導体の設計に尽力。99年、当時のCEOのテクニカルアシスタントに指名される。2012年にAMDに入社、14年にCEOとなる。

文=イアン・マーティン、リチャード・ニエバ 翻訳=木村理恵 編集=森 裕子

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年9月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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