クモの糸に着想を得た「b-silk」
現在のボルトスレッズの主力製品は、クモの糸から着想を得て開発した「b-silk」で、スキンケア製品やクレンザーの主要成分として使われている。同社は「Eighteen B」という自社ブランドのスキンケア製品を製造していたことがあるが、今では他のブランドに原材料を販売するビジネスに切り替えている。ボルトスレッズは、49件の特許を保有しているが、そのうち34件はb-silkに関するものだ。また、現在131件が出願中となっている。b-silkは、時間が経っても劣化しないシリコーンエラストマーの代替製品となるよう設計されており、同社は市場規模を40億ドルと見積もっている。
「b-silkの展開はとても美しい話だと考えている。分解をしないという大きな問題を抱えた製品を、バイオベースで生分解するものに置き換えたのだ」とウィドマイヤーはいう。彼は、証券取引委員会への書類提出が完了するまでは、ボルトスレッズの売上高を公表しないと述べた。
ディープテックは難易度が高くとりわけ合成生物学はボルトスレッズや他の企業が経験したように、極めて難しい。その良い例がバイオベンチャーのGinkgo Bioworks(ギンコ・バイオワークス)だ。同社は、生物学のためのより優れたツールを開発するというビジョンを掲げ、2021年9月にSPAC上場を果たした。5人の創業メンバーは、一時期ビリオネアになったものの、その後同社の株価は暴落し、現在の時価総額は37億ドルにとどまっている。
また、もともとバイオ燃料開発を手がけていたAmyris(アミリス)は、パーソナルケア製品の開発に事業を転換したが、今年8月に米連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請した。さらに、バイオ企業のZymergen(ザイマージェン)は、IPO後時価総額が30億ドルに達したが、わずか4カ月後に内部崩壊し、ギンコ・バイオワークスに買収された。
ボルトスレッズは、今回のディールで手にする4600万ドルでb-silkの流通を拡大し、生産コストを下げる計画だ。ウィドマイヤーは、将来的にバイオマテリアルを使ったパーソナルケアやファッション、フットウェア、家庭用品などの消費者向け製品を開発したいと考えている。
ウィドマイヤーは、製品利用に向けたバイオマテリアル開発は困難であり、まだ初期段階にあると言い続けてきた。「技術は実証済みだ。実際の製品事例を作ることができれば、やり抜く価値があったと言えるかもしれない」と彼は語った。
(forbes.com 原文)