藻類はたんぱく質や油、炭水化物を含む単純な水生生物だが、適切に培養するとバイオ燃料や建築資材、食品原料をはじめ、さまざまな製品をつくるのに利用できる。単細胞性の藻類である微細藻類については、企業がすでに、高度にカスタマイズされた成分を製造する「バイオファクトリー」としても活用しはじめている。
たとえばカナダのアルジーC(Algae-C)社は、医薬品や栄養補助食品の有効成分を製造するための「デザイナー微細藻類」を開発している。創業者のマザー・カースカレン最高経営責任者(CEO)によると、ちょうどコンピューターにコードを書き込むことで動作の仕方を教えられるように、微細藻類に分離DNA断片を挿入することで、こうした成分のつくり方を教えることができるという。
「化学プロセスは複雑なものですが、藻類は植物由来の分子の製造と自然な親和性があるので、当社のプラットフォームではそれが容易になるのです」とカースカレンは説明する。医薬品の有効成分の大部分は植物からつくられるため、藻類を使えば時間や経費を節約できるほか、廃棄物や土地や水の使用も削減でき、「大幅なコスト節減」(カースカレン)にもつながる。
米国のチェッカースポット(Checkerspot)社も、高機能の微細藻類由来素材や成分を手がける一社だ。スキンケアブランドのアルジェニスト(Algenist)と研究開発で提携しており、環境にやさしいスキンケア製品に用いるコラーゲンやアスコルビン酸の生産に取り組んでいる。
チェッカースポットのチャールズ・ディムラーCEOは「バイオテクノロジーと素材開発によって、かつてなかったような方法でスキンケアソリューションが生みだされてきています」と話す。
藻類産業については、業界が過去10年、研究を積み重ね、大きな進展を遂げてきたにもかかわらず、まだ形成途上とみる人もいるかもしれない。たしかに、海藻を使った食品や農業用肥料などを除くと、微細藻類がもたらす大きな恩恵は一般の消費者にはまだあまり知られていない。