「他社が一方に動いたら、我々は別の方向に動きたいと考えている。本当に大事なのは、人々にとって重要な意味を持つ製品を長期に渡って作ることだ」とボルトスレッズの共同創業者兼CEOであるダン・ウィドマイヤー(Dan Widmaier)は話す。
ボルトスレッズは、ゴールドマン・サックス出身の投資家のティモシー・バビッチがCEOを務めるSPAC「Golden Arrow Merger Corp.」と合併する予定だ。合併した新会社の名称は「Bolt Projects Holdings」で、現在42歳のウィドマイヤーはCEOに留まる。このディールは、2024年第1四半期に完了予定という。
ウィドマイヤーによると、ボルトスレッズはこれまでにファウンダーズ・ファンドやベイリー・ギフォードなどから3億3400万ドルを調達しているが、年初から成長資金を提供してくれるSPACを探し始めたという。SPACの人気が低迷し、合成生物学分野の企業の多くが苦境に立たされる中、ウィドマイヤーは世界で最も困難な環境問題の1つを解決することを目指し、自社の技術を信じ続けた。
「我々は、バイオマテリアルに対して壮大で大胆な長期ビジョンを持っている。このプラットフォームで新製品を作るためには、何度も原点も立ち返る必要がある」とウィドマイヤーは話す。
ウィドマイヤーと2人の共同創業者らは人工クモの糸を開発するため、2009年にボルトスレッズを設立した。過去数十年に渡って、世界中の科学者が人工クモの糸の開発を目指してきた。クモの糸は非常に柔らかく丈夫であることで知られており、軽量で長持ちし、持続可能な衣服を作ることが可能だ。環境を汚染してきたアパレル業界において、これは革新的なことだ。
ウィドマイヤーは、カリフォルニア大学サンフランシスコ校で化学と化学生物学の博士課程に在籍中、クモの糸の研究を行っていた。しかし、バイオベースのクモの糸を量産することは困難であることが判明し、ボルトスレッズは他のバイオマテリアルに専念することにした。