3つ目の違いは、現在の石油市場は50年前にアラブ諸国による石油禁輸の影響を軽減した「セブン・シスターズ」(欧米の大手石油会社7社)の強い支配下にはない一方で、巨大なスポット(随時取引)市場が存在することだ。そのおかげで、1970年代の2回の石油危機で大きな問題になったようなパニック買いは抑えられるに違いない。民間の石油販売者(トレーダーや供給余剰のある企業)が買いだめに走る可能性はあるものの、供給面での脅威はパニック買いを引き起こすほど深刻ではないように見える。
4つ目は、中東の石油輸出国は今では自国の石油産業を完全に掌握しており、大半の国は石油を政治的な武器として用いるのを控えていることだ。1970年代以降、石油輸入国は、不安定で敵対的と判断した地域の石油への依存度を引き下げる努力をした。中東産の石油を完全に代替するのは難しすぎるため多くの試みは挫折したが、それでも1980年代初めにOPEC産石油への需要は半減している。
最後に、経済協力開発機構(OECD)諸国の政府によって管理されている石油在庫が、過去2年は米国の戦略備蓄3億バレル放出をはじめ大幅に減っているとはいえ、なお推定12億バレルほどあることだ。もし石油の供給が絞られてもその量は比較的少ないと想定されることを考慮すると、これらの在庫は石油価格の大幅な上昇に賭けたい人にとって不安材料になるだろう。今回の紛争による長期的な影響はまだ不透明な面があるものの、石油価格と世界経済への短期的な脅威はそれほど大きなものではないと考えられる。
(forbes.com 原文)