新たな「グレート・リセッション」前夜か 状況酷似とJPモルガンが警鐘

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現在、株式市場や米景気について言われていることは、グレート・リセッション(2008年の金融危機をきっかけとする景気後退)前に言われていたことと薄気味悪いほど似ている──。米銀大手JPモルガンのストラテジストが今週、そう指摘した。米連邦準備制度理事会(FRB)や金融市場、経済界が米経済の「ソフトランディング(軟着陸)」を願うなか、不吉な警告になった。

JPモルガンのチーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト、マルコ・コラノビッチ率いるグループは27日の顧客向けリポートで、現在の市場状況について、金利の急上昇や、懸念すべき兆候が多くありながら比較的強気な投資家心理など「2008年(の前夜)と重なる点がある」と注意を促した。

「2007年、危機に突入しようとしていた頃に、投資家たちはまさに今と同じようなことを議論していた。FRBの利上げ停止、個人消費の回復力、ソフトランディング、雇用市場の強さなどだ」。コラノビッチは、利上げによる長引く影響について警鐘を鳴らしたJPモルガンの2007年のリポートを引き合いに出しながら、そう記している。

15年前、株式市場と米経済は崩壊することになったが、現在は大方の市場関係者はそこまで悲観的なシナリオを想定していない。だがコラノビッチによれば、いくつかの兆候は当時以上に事態が切迫していることを示しているという。たとえば、米政策金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の過去1年半の引き上げ幅が2002〜08年の5倍に達することや、当時よりも世界的に金融政策が引き締められていること、利上げの影響が中小企業に「偏って」出ていることなどだ。

コラノビッチは、現在は当時よりも家計の貯蓄が積み上がっていることや、住宅購入者や企業がかなり低い金利でローンを組んでいることなど複数の要因が重なり、利上げの影響が完全に表れるまでに「ラグ」が生じていると説明している。

弱気派のコラノビッチは顧客に対して「金利がひどく制約的な領域にとどまり、(ロシアのウクライナ侵略など)地政学的リスクの高まりが続く限り」、株式やクレジットは避けて債券に投資すべきだと助言している。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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