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2023.09.30 10:00

新たな「グレート・リセッション」前夜か 状況酷似とJPモルガンが警鐘

遠藤宗生

「AIブームでも景気変わらず」

コラノビッチは「AI(のブーム)で景気が変わったり、インフレや金利の悪影響が埋め合わされたりするだろうか。われわれの考えはノーだ」とも書いている。米国の主要株価指数は今年前半、金融政策の急激な変動を受けた昨年の下落をほぼ挽回したが、これは主に、エヌビディアやアップルといったAI関連の米テック大手7社の時価総額が4兆1000億ドル(約610兆円)膨らんだためだった。

コラノビッチはこれらの企業の株価急騰は「投機的」な動きだと断じている。事実、AI関連銘柄はここ数カ月精彩を欠き、テック株の比率が高いナスダック総合株価指数は第3四半期に5%超下げている。

今春、有名な銀行が相次いで経営破綻した際には2008年の銀行メルトダウンがよく参照されたが、今回のリポートではそれについては言及されていない。グレート・リセッション中にFRBの高官を務めたジャネット・イエレン米財務長官は3月、「2008年とは状況が異なる」と強調している。

ダウ工業株30種平均、S&P500種株価指数、ナスダックは昨年、FRBがインフレ退治を優先して低金利政策をやめたことを背景に、通年の騰落率がいずれも2008年以降で最悪を記録した。FF金利は現在5.25~5.5%と、2001年以来の高い水準となっている。

先週の連邦公開市場委員会(FOMC)では金利据え置きが決定された一方、2025年末時点の金利は4%近くとの見通しが示され、借り入れに不利な状況はしばらく続くと見込まれている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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