田尻:日本は海外に寄せていく傾向がありますよね。最近では京都の街並みも観光に寄せた事業のために、これまで守ってきた大切なものが失われています。そういうことを目の当たりにすることが多くて、守るべきところは迎合せずに守っていく方がいいと感じています。
中道:田尻さんは着物や帯という日本文化を新しい形にしたブランドを国内外に広めていこうとされていますが、どういう視点で日本を見ていますか。
田尻:日本文化を守っていくためには、上手く残していく方法を考えることが大事だと思っています。
中道:僕がイギリスでサッカーのクラブチームを持っていた時、日本のチームも試合に来ていましたが、彼らは勝てないんです。日本人はボールを扱うテクニックは優れているけれど、シュートを打たない。相手の体制を崩してから綺麗にやろうとするんです。失敗してはいけないと。結局それで負けてしまう。
だから田尻さんが前回、自分はヨーロッパを知らないから商品だけ持ってパリとミラノに出て行ったとお話された時はすごいと思いました。失敗を恐れていないし、やってみなければわからないというのを地でいっている。あんな風にやる人はそうそういないと思いますよ。
田尻:行動してみて失敗すると、一瞬落ち込みます。けれど、落ち込むのは行動した証だと思うようにしています。シュートを打たずにボールを取られるよりも、打って外した方が得るものは大きいはず。でも日本ではそういうことをやりにくい風潮がありますよね。だから起業も、失敗したら恥ずかしいのでと二の足を踏みがちで。チャレンジしたことに価値があって、その失敗を生かしてまた新しいことに挑戦すればいいというのが僕の考え方です。
日本には、例えば30代になったらこうでなければいけないみたいな風潮もあります。日本にずっといると、そういう雰囲気に染まってくるというか、足並みを揃えようとしてしまう部分が、ビジネスでも自分の人生でもあります。だから世界に出てみて、世界はこうなのだなと、刺激や学びを取り入れなければいけないなと思っています。
中道:年齢のことは世界共通だと思いますよ。だんだん年をとっていくと、これはやらない方がいいかもしれないという理性が働くようなことは多少なりともあるかなと。この後は、「ルリエ エイトワン」を大きくしていくんですよね。
田尻:そう思っています。今を1だとしたら、それを5とか10にしていくのにどういう形でやっていけばいいのか、その方法を今勉強中で。今までのようにひとりでやるのか、誰かに協力してもらって事業をスケールアップしていくのか。
中道:仲間は絶対に必要ですよ。
田尻:やっぱりそうですよね。ひとりの限界も感じていますし、ブランドの可能性に共感してくれる方がいればタッグを組みたいです。資金面でも潤滑運営ができるような体制を整えられればなと思っています。