モスによれば、重地雷はもっぱら掩蔽壕やチェックポイントといった静止目標に対して用いられ、迫撃砲弾などその他の爆弾は車両に対して用いられるようだという。後者の場合はドローンに複数個積めるため、続けて何度か攻撃できるというメリットがある。1発目が外れても、オペレーターは位置を調整して次の爆弾を放つ機会がある。
それに対して、地雷は1回きりの攻撃になるが、重量が11kg程度あるため3kgの迫撃砲弾よりも破壊力は格段に大きい。破壊力の違いには、迫撃砲弾は主に対人殺傷用の金属片を散布するように設計されているため、ほとんどが金属で爆薬は重量比でせいぜい20%にとどまるのに対して、TM-62は逆に重要の80%をTNT爆薬またはRDX爆薬が占めていることも関係している。
技術的には、これらのドローンを使って地雷を敷設することも可能だろう。低空をホバリングし、地面に直接地雷を置けばいい。米国がウクライナに供与した砲弾式の遠隔対装甲地雷(RAAM)のように、ドローンでもロシア軍の陣地の背後など予期せぬ場所に地雷原を設けることができるかもしれない。
TM-62の破壊力は半面、それを投下するドローンにとっても危険なものになりうる。大型地雷の危険半径は擲弾よりもはるかに大きいからだ。オペレーターはこの点をはっきり認識しており、事実、TM-62による爆撃の動画では、目標に命中するまでの時間からみて100m以上上空から爆弾を投下している。これくらい上ならドローンの安全は確保されるだろう。
ただその分、命中精度は落ちるに違いない。おそらく、映像には映っていないところで失敗も数多く重ねられているのだろう。それでも、このドローンによる爆撃の精確さは目を引く。
安価な精密兵器としてドローンが台頭
このようにドローン戦が「民主化」されることで、以前なら何十万ドルもする高価な誘導兵器でしかできなかったような精密攻撃が、低コストで可能になっている。ウクライナは古いTM-62の在庫を大量に活用できるようなので、実際のコストはドローン本体だけということになる。ドローンのほうは繰り返し利用できる。特筆すべきは、この戦争以前には、重武装のマルチコプターが戦争で使用された例はなかったということだ。いまでは複数のタイプがあり、しかも急速に進化している。オペレーターによってマニュアルで誘導・制御されるドローンは、安価な爆薬を相当な量運ぶことができる。将来的にはより高度なソフトウェアを搭載し、さらに精確に目標の位置を特定して爆弾を投下できるようになるだろう。
(forbes.com 原文)