英国防省の2日の報告によると、黒海艦隊では「ウクライナ南部の戦線で同時多発する脅威への対処に苦慮する中、ここ数週間は、海軍航空部門が艦隊の作戦において特に重要な役割を担っている」その「主要任務」は「無人水上艇の早期発見」であり「作戦のカギを握る戦力は、1950年代に設計された水陸両用機Be-12で、占領下のクリミアの基地から飛び立っている」という。
製造されて50年以上が経つ双発エンジンの哨戒飛行艇3機が、黒海周辺で哨戒や救難の任に就いている可能性があるというのだ。ロシア海軍航空隊は、他の艦隊でも3機のBe-12を運用しているとの情報もある。
Be-12が目撃されることはまれだ。そのため、2022年8月9日にウクライナがクリミア半島西岸にあるサキ空軍基地を攻撃した数日後、同基地をとらえた商業衛星画像に特徴的なガルウイングの飛行艇が1機写っていたときは、ちょっとしたニュースになった。
このときのウクライナ軍の攻撃はドローンか弾道ミサイルによって行われ、基地に駐機していた複数のロシア海軍戦闘機が損傷するか破壊された。だが、Be-12は損害を免れたようだ。空襲直後の衛星画像では、飛行艇は被害の大きかった駐機場から少し離れた護岸に駐機していた。
重量32トンのBe-12は、1960年代にソビエト連邦艦隊に就役した。最大速力は時速およそ530キロ、積載量は7トン、着水可能で哨戒・救難任務をこなし、輸出でもそこそこの成功を収めた。
ウクライナ海軍は、1991年のソ連崩壊時に7機のBe-12を引き継ぎ、サキ基地を拠点に運用していた。2014年2月にロシアがクリミアに侵攻した際、脱出できたBe-12は1機だけで、残りは鹵獲(ろかく)された。奇妙なことに、ロシア軍はクリミアで鹵獲したウクライナ軍機の多くをウクライナに返還し、その中にはBe-12も1機含まれていた。
ウクライナ軍所属の2機のBe-12は2年後、黒海で北大西洋条約機構(NATO)が実施した多国籍軍事演習「シーブリーズ」に参加。両機とも、少なくとも2019年までは運用されていた。しかし、2021年後半に撮影された2枚を含む直近の写真を見ると、機体は修理が行き届いていないようで、運用が中止された可能性が高い。