黒海上空の制空権争いは、クリミアに残存するS-400地対空ミサイルの援護を受けられるロシアがやや有利となっている。もちろん、ウクライナがクリミアにあるロシアの防空施設を攻撃し続ければ、状況は変わるかもしれない。
昨年8月にサキ基地に駐機していたBe-12が飛行可能な状態かを確認するすべはない。だが、黒海艦隊に所属する3機のBe-12のうち少なくとも一部が、クリミア沖で今も運用されているらしい証拠がある。
英情報機関の予測では、ロシアは年代物のBe-12による偵察でドローン潜水艇の接近を発見しようとしている。Be-12は機首に短距離水上探査レーダー、尾翼にAPMシリーズ磁気探知機を搭載しているが、旧式のセンサー類はとっくに保守対象外の可能性が高い。
その場合、探索は目視に頼って行われることになるが、日中に限定される上、効果はほとんど期待できない。いうまでもなく、潜水艇を肉眼で発見するのは至難の業だ。残存艦艇を哨戒艦やヘリコプターで囲んだほうが役に立つかもしれない。
黒海艦隊はこれまでに巡洋艦1隻、揚陸艦3隻、潜水艦1隻、補給艦1隻、哨戒艇と上陸用舟艇数隻を失ったが、アドミラル・グリゴロビッチ級フリゲート艦3隻、キロ型潜水艦5隻、艦隊停泊地の近接防御を担うグリシャIII型や22160型のコルベット艦各4隻を含む小型艦艇数十隻は、いまだ健在だ。
1000トン級のグリシャIIIは、デュアルソナーを搭載した対潜艦。1700トン級の22160型は対艦・対地火器や巡航ミサイルで武装し、カモフKa-27対潜ヘリコプター用の飛行甲板を備えている。グリシャIIIがドローン潜水艇を広範囲に探索し、22160型が水上ドローンに警戒し、レーダーとソナーを装備したカモフが両者を支援できる。
ただ、老朽化したBe-12については、日中限定で飛び回り、高速で接近するウクライナのドローンの機影を発見しようと乗員が目を皿のようにして窓から外を覗こうとも、大きな貢献は期待できないだろう。
(forbes.com 原文)