テキサス州の元人身売買捜査官ジョー・スカラムッチによると、「探す」などのツールは被害者を監視する最も簡単な方法であるため、人身売買犯によって広く使われている。
フォーブスはアップルにコメントを求めたが、本稿掲載時点で返答はない。一方、フォーブスが取材した専門家は、こうしたテクノロジーに関する問題はよく知られているが、悪用を防ぐことは困難であることを認めた。
コーネル大学技術虐待撲滅クリニック(Clinic to End Tech Abuse=CETA)の運営責任者で、近親者間暴力の被害者支援に取り組んでいるラナ・ラムジットはフォーブスに対し、CETAは毎月25~30人の被害者を支援しているが、「デバイスを探す」アプリの遠隔監視ツールとしての使用はその中でも最も多い問題だと説明。「虐待者は、欲しい情報を手に入れるための努力を最小限にする傾向がある」ことから、有用かつ使いやすいこうしたツールが悪用されていると語った。
ラムジットによると、CETAは虐待の被害者保護に関連する製品デザインについて、アップルにフィードバックを行っている。これはさまざまなアップデートにつながっており、たとえばアップルは「iPhoneを探す」機能について、電源を切った状態でも正確な位置情報を発信し続けることを知らせる通知をユーザーに送るようになったという。アップルには「個人情報安全性チェック」という仕組みもあり、自分の身に危険を感じたユーザーは、直ちにデータと位置情報の共有を停止できる。
しかし、自分の位置情報を誰が見ているかを知ることが不可能な場合もある。ラムジットが指摘する問題の1つは、iPhoneの位置はブラウザーからでもチェックできるが、そのアクセスがログインしたデバイスとして記録されないことだ。ラムジットは、いつ、誰がデバイスの位置情報をチェックしたかのログが確実に記録されるようにすべきだと指摘した。そうすることで、虐待が民事あるいは刑事裁判になった際の証拠になる。
だがアップルをはじめとするメーカー各社には、被害者が自分の位置情報を共有するよう強制されたり、知らない間に共有されることを防ぐために取れる方策は、こうしたアップデート以外にほぼないかもしれない。電子フロンティア財団のサイバーセキュリティー担当ディレクターで、いわゆる「ストーカーウエア」(被害者のデバイスから位置情報など不正送信するアプリ)に対抗する活動に取り組んでいるエバ・ガルペリンは、「coercion alert mode(強制警告モード)」に関する議論が進められているが、どうすればそのしくみが働くかはわかっていないと語った。「提案できることがあればよいのだが、残念ながらない」
(forbes.com 原文)