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2023.10.14

スマホを「探す」機能、遠隔ストーカー行為への悪用が横行

iPhoneの「探す」アプリ(Getty Images)

ノルウェーに住むヨハンナ(仮名・24歳)は2022年春、同国の警察に、10年前に始まった一連の出来事について通報した。当時14歳だったヨハンナは、見知らぬ人とチャットできるアプリ「Omegle」を使い、ジョン(仮名)という成人の米国人男性と出会い、やがて恋愛関係になった。

ジョンはヨハンナにプレゼントを送り、ヨハンナはジョンに裸の写真を送った。米当局の捜査令状によると、ジョンは次第にヨハンナを搾取するようになり、フェイスブックとアップルのアカウントを乗っ取り、「iPhoneを探す」アプリで居場所を追跡し始めた。2014年、ジョンはヨハンナが友達と食事をしていたレストランに突然現れ、ヨハンナをホテルに連れ込むと、性的に虐待してその様子をスマートフォンで撮影した。

ヨハンナの被害は、国際刑事警察機構(インターポール)を通じて米当局に通知された。米警察は今年4月、バージニア州ショーズビルに住む容疑者を特定。しかし、容疑者が自分のiPhone 14とMacBook Proを警察が調べることを拒んだことで、捜査は行き詰まった。米連邦捜査局(FBI)は容疑者の指紋や顔認証でデバイスのロックを解除するための令状を取ったが、どちらのデバイスも解除できなかった。その原因は分かっていない。米司法省はフォーブスに対し、未成年に対する性的強制および児童性的虐待表現物制作の疑いで捜査を進めているが、現時点で容疑者は訴追されていないと説明した。

さまざまなメーカーが提供するデバイス追跡技術が、人を虐待したり支配したりするツールとして使用されていることは、何年も前から知られている。「iPhoneを探す」以外にも、他のメーカー製スマートフォンの追跡ツールや、親が子供を監視するために使う「Life360」などのツールが、ストーカーから性的目的の人身売買まで、さまざまな犯罪に悪用されていることが報じられている。

2019年には、英国の建築家カラム・ヘンダーソン(当時28)が、出会い系アプリで知り合った女性を「探す」アプリで追跡し嫌がらせをしたとして、有罪判決を受けた。オーストラリア警察も、こうしたスマホ追跡アプリが頻繁に虐待に使用されていることを報告している。また最近フォーブスが報じた人身売買事件では、2020年末、売春を強要された未成年の少女が警察に対し、売春婦たちは「探す」アプリで居場所を監視されていたと話した。
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翻訳=高橋信夫・編集=遠藤宗生

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