北米

2023.03.22

FBグループで発生した「ママ友殺人事件」とその捜査を巡る議論

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2022年10月下旬、第1子を妊娠中だったケリーという名前の女性は、地元アーカンソー州シロアムスプリングスのママたちが交流するFacebook(フェイスブック)の非公開グループに「小さなゆりかごとマタニティウェアを探しています」と投稿した。

すると、ルーシー・バロウというメンバーから「サイズの合うトップスが数枚あります。私はベラ・ビスタに住んでいますが、金曜日ならどこかで会うことができます」という返事が届いた。バロウのアカウントは10月に開設されたばかりで、プロフィール写真にはおもちゃを噛む犬が写っていた。

フェイスブック上には、近隣に住むママたちが子ども用品を売買するマーケットプレイスが多数存在し、このような会話が日常的に交わされている。ケリーが所属するグループには6500人が登録しており、全員がアーカンソー州北西部の住民だ。バロウの行為は一見親切心からのものに見えたが、ケリーには何かが引っかかったという。

実際、FBIによるとルーシー・バロウというのは偽名で、本名はアンバー・ウォーターマンという殺人事件の容疑者だったという。フォーブスが入手した捜査令状には、FBIが記録した2人のやり取りが詳細に記載されている。ウォーターマンは、妊婦を誘拐して殺害し、胎児を奪うためにこのグループに参加していたのだ。

FBIによると、ウォーターマンはその後Facebookグループを通じて33歳の妊婦アシュリー・ブッシュを誘い出し、射殺して胎児を取り出したという。彼女は、自分が死産したと偽って胎児の遺体を救急隊員に見せた。ブッシュの遺体は、自宅近くで燃やして隠したとされる。彼女は起訴されたが無罪を主張しており、公判は6月に行われる予定だ。

この殺人事件は全米で大きな注目を集めたが、ウォーターマンがFacebookグループを悪用していたことは当初報道されなかった。また、ケリーやグループを運営している2人の女性には、ウォーターマンとルーシー・バロウについて知らされておらず、彼女たちはFBIがフォーラムを捜査したことも認識していなかった。
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編集=上田裕資

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