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2023.09.18

アップルのエアタグを「武器の密輸」に活用する犯罪者たち

Jack Skeens / Shutterstock.com

米税関・国境警備局(CBP)は昨年11月、イリノイ州から中東エルサレムに向かう不審な小包を発見した。中身は家庭用の調理グリルだったが、捜査官がX線検査をした上で解体すると、アルミホイルに包まれたライフルの銃身とアップルのAirTag(エアタグ)が入っていた。

アップルが2021年に発売したエアタグは、財布などの持ち物を追跡するのに役立つ安価なデバイスだが、ストーカー行為などの犯罪にも使われている。

フォーブスが入手した捜索令状によると、CBPは、武器の密輸業者が荷物の場所を追跡するためにエアタグを用いていると指摘している。

最近退職したアリゾナ州の元捜査官ブレイディ・ウィルキンスは「麻薬や武器の密売人は、警察や他の誰かによって荷物が暴かれていないことを確認したい。他のグループに奪われたり、警察に押収されりしたら、放棄したり、何か問題が起きていることを知ったりできる」と解説する。

令状によると、国土安全保障省(DHS)の国土安全捜査局(HSI)は、銃身の発送者をイリノイ州パロス在住のアミン・ベトゥニ容疑者と特定。荷物には、容疑者がオンラインで購入したとみられるAR-15ライフルとグロック社製拳銃の部品が入っており、ラベルには発送者として容疑者の氏名と、容疑者が所有している土地の隣にある空き地の住所が書かれていた。

これとは別に、イスラエルの国境警備当局も、調理グリルの中に隠された銃部品とエアタグが入った荷物を押収した。荷物には返送先としてベトゥニ容疑者宅の住所が記載されていた。イスラエル当局はさらに、自動車部品の中に隠された銃部品とエアタグ入りの荷物も押収したという。

このような荷物に個人の住所を記載するのは「愚かなミス」だとウィルキンスは述べている。

警察は昨年12月、ベトゥニ容疑者の自宅を家宅捜索したが、本人は不在だった。しかし、警察が家に踏み込んでからわずか10分後、容疑者のエアタグのひとつがiCloudアカウントとのペアリングを解除されたことから、警察は容疑者が監視カメラを使用したとみている。

ベトゥニは今年7月に逮捕され、グロック社製拳銃を全自動式に変える特殊なスイッチを米国内で違法に出荷した疑いで訴追された。銃の部品を違法に輸出した容疑については、現在も捜査が行われている。

米国のほかの法執行機関も密かにエアタグを使用している。フォーブスは今年3月、麻薬取締局(DEA)が違法な薬物の捜査にエアタグを使用したことを報じていた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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