いつまで続く? 弾道飛行による宇宙旅行
宇宙旅行を一気に身近に感じさせてくれたこれら2社ではあるが、昨今においては両社とも少々懸念すべき点がある。前述したヴァージン・ギャラクティック社は、リチャード・ブランソン氏が率いるヴァージン・グループの一企業。そのグループ会社の1つだった格安航空会社ヴァージン・アトランティック航空は、コロナ禍の影響で2020年に連邦倒産法の適用を申請している。
また、スペースシップ2と同様に、航空機から空中射出される無人ロケットによって、小型衛星を打ち上げるサービスを行っていたヴァージン・オービット社も、2023年4月に連邦倒産法のチャプター11の適用を申請した。
こうした状況のなか、ヴァージン・ギャラクティック社はスペースシップ2の打ち上げペースを速めており、2011年11月には新たな空中射出型の宇宙船「Delta」の製造計画を発表した。タフを標榜するブランソン氏ではあるが、同社の株価も低迷しており、その台所事情はかなり苦しそうだ。
一方、ジェフ・ベゾス氏率いるブルーオリジン社は、NASAからの協力金を受けながら、新型の民間宇宙ステーションや有人月着陸機の開発を進めるなど、そのキャッシュフローは潤沢に思える。しかし、観光宇宙船ニューシェパードは2022年9月に事故を起こし、それ以来、同機の打ち上げは停止中。運行の再開は目途が立っていない。
メインエンジンが制御不能となったこの事故は、ペイロード(積載物)がヒトではなく観測機器だったことから大事には至らず、また、自動帰還するはずのロケット部分は失われたが、上昇中にロケットから緊急離脱したカプセルは無事着陸した。ある意味においてこの事故は、未来の旅行者に安全性をアピールした結果となった。