英国情報通信庁(Ofcom)によって施行されるこの法案は、違法なコンテンツを削除し、未成年の子どもが有害なものを目にするのを防ぐことを求めている。
「私たちの常識的なアプローチは、オフラインで違法なものはオンラインでも違法であることを明確にするものだ」とミシェル・ドネラン技術長官は述べている。
この法案は、違反した企業に最大で全世界の年間売上高の10%の制裁金を科す可能性がある厳しい内容で、さまざまな企業から反発を受けている。特に議論を呼んでいるのが、利用者のプライベートなメッセージに有害コンテンツが含まれていないかどうかの監視を、アプリの運営元に義務付け、違反した場合は巨額の罰金を科すという点だ。
英国の消費者団体Which?や、児童虐待防止協会(NSPCC)などは、この法案を歓迎しているが、WhatsApp(ワッツアップ)やSignal(シグナル)などの暗号化チャットアプリの運営元は4月にこの法案を早急に見直すよう求める書簡を発表していた。彼らが特に問題視しているのは、この法案がエンド・ツー・エンドの暗号化を破り、人々の個人的なメッセージを無差別に監視する道を開くことになるという点だ。
「英国政府は、個人的なメッセージすべてを安全にスキャンすることは不可能だと認めたが、将来的にテック企業にそれを強制する権限をOfcomに与えた」と、プライバシーと表現の自由を擁護する団体のオープン・ライツ・グループ(ORG)のキャンペーン・マネージャーのジェームズ・ベイカーは述べている。
「この法案は、ジャーナリストや内部告発者、DV被害者らに害を及ぼす可能性がある」と彼は主張している。
一方、電子フロンティア財団は「規制当局が、暗号化されたサービスに危険なバックドアを作ることを要求する権利を主張するなら、我々は暗号化されたメッセージングサービスが英国から撤退することを期待する」と述べている。
WhatsAppの責任者のウィル・キャスカートは7日のX(旧ツイッター)の投稿で「WhatsAppは決して暗号化を解除しないし、そのような脅威に対して警戒を怠らない」と主張していた。
(forbes.com 原文)